・・・しかし、その軍事的性質は、国民的解放の意義が失われ過ぎ去った後までも存続し、日清、日露の戦争に勝利を博すると共に、ます/\支配的地位をかため、発展した。 明治年間、殊に、日清戦争から、日露戦争前後にかけての期間は、最も軍国主義的精神が、・・・ 黒島伝治 「明治の戦争文学」
・・・ それだのに、純粋な線条の踊りは一般観客にはさっぱり評価されないようである一方でレヴューのほうは大衆の喝采を博するのが通例であるらしい。ここに映画製作者の前に提出された一つの大きな問題があると思われる。 あまりに抽象的で特殊な少数の・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
・・・これと同じ意味においてまたわが国の剣劇の大立ち回りが大衆の喝采を博するのであろう。荒木又右衛門が三十余人を相手に奮闘するのを見て理屈抜きにおもしろいと思わない日本人は少ないであろう。いわゆるプロ芸術のねらいどころもここに共通点を持っているよ・・・ 寺田寅彦 「映画時代」
・・・一方ではまた、大小方円の見さかいもつかないほどに頭が悪いおかげで大胆な実験をし大胆な理論を公にしその結果として百の間違いの内に一つ二つの真を見つけ出して学界に何がしかの貢献をしまた誤って大家の名を博する事さえある。しかし科学の世界ではすべて・・・ 寺田寅彦 「科学者とあたま」
・・・映画というものは、なんでも、われわれがしたくてたまらないが実際はなかなか容易にできないと思うような事をやって見せれば大衆の喝采を博するのだそうである。なるほどこの映画にもそういうところがある。いちばんおもしろいのは、三艘の大飛行船が船首を並・・・ 寺田寅彦 「からすうりの花と蛾」
・・・映画というものは、なんでも、吾々がしたくてたまらないが実際はなかなか容易に出来ないと思うような事をやって見せれば大衆の喝采を博するのだそうである。なるほどこの映画にもそういうところがある。一番面白いのは、三艘の大飛行船が船首を並べて断雲の間・・・ 寺田寅彦 「烏瓜の花と蛾」
・・・従って上記のごときは俳壇の諸家の一粲を博するにも足りないものであろうが、しかし全然畑違いのディレッタントの放言も時に何かの参考になることもあろうかと思って、ただ心のおもむくままをしるしてみた次第である。多忙と微恙に煩わされてはなはだまとまり・・・ 寺田寅彦 「俳句の精神」
・・・その人は果して完全高徳の人物にして、私徳公徳に欠くるところなく、もって天下衆人の尊信を博するに足るべきや。諭吉においては、文部省中にかかる人物あるべきを信ぜざるのみならず、日本国中にその有無を疑う者なり。 あるいはこの撰は、一個人の意見・・・ 福沢諭吉 「読倫理教科書」
・・・その五子と称し四老と称す、もとより比較的の讃辞にして、芭蕉の俳句といえどもその一笑を博するに過ぎざりしならん。蕪村の眼高きことかくのごとく、手腕またこれに副う。而して後に俳壇の革命は成れり。 ある人咸陽宮の釘かくしなりとて持てるを蕪村は・・・ 正岡子規 「俳人蕪村」
出典:青空文庫