・・・に引用された「病牀即事」を詠じた十首は、もう少し複雑になっている。「月」は毎句にあり、「ガラス戸」が六、「鳥かごの屋根」と「森」と「ランプ」が各二あるが、そのほかにもいろいろの景物が点綴され、ほととぎすや白雲や汽車やブリキや紙や杉木立ちやそ・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・南郭文集初編巻の四に即事二首篠池作なるものを載せている。其一に曰く「一臥茅堂篠水陰。長裾休レ曳此蕭森。連城抱レ璞多時泣。通邑伝レ書百歳心。向レ暮林烏無数黒。歴レ年江樹自然深。人情湖海空迢※も明和安永の頃不忍池のほとりに居を卜した。大田南畝が・・・ 永井荷風 「上野」
・・・事即理、理即事である。スピノザの十全なる知識とは、絶対の自己否定において自己自身を見る、自覚的直観を意味するものでなければならない。自己が万法に証せらるる所に、我々の知識は十全であるのである。スピノザはいう、我々に十全にして完全なる思想があ・・・ 西田幾多郎 「デカルト哲学について」
出典:青空文庫