げんしりょくでんち【原子力電池】
半減期の長い放射性同位体が出す放射線のエネルギーを電気エネルギーに変える仕組みの電池。α崩壊を起こすプルトニウム238やポロニウム210が用いられる。寿命が長いため宇宙探査機の電源として搭載されるほか、1960年代に心臓ペースメーカーで利用された。ラジオアイソトープ電池。アイソトープ電池。RI電池。放射線電池。
げんしりょくはつでん【原子力発電】
原子炉で発生した熱エネルギーで蒸気をつくり、タービン発電機を運転して発電する方法。原発 (げんぱつ) 。→原子炉[補説]
げんしりょくはつでんしょ【原子力発電所】
原子力発電の方式による発電所。世界で初めて民生用として建設されたのはソ連(現ロシア)のオブニンスク原子力発電所で、1954年に運転開始。日本初は東海発電所。原発 (げんぱつ) 。→原子炉[補説] [補説]日本の原子力発電所(令和6年9月現在)名称電気事業者立地場所運転開始年泊発電所北海道電力北海道古宇郡泊村平成元年(1989)東通 (ひがしどおり) 原子力発電所東北電力青森県下北郡東通村平成17年(2005)女川 (おながわ) 原子力発電所(2・3号機)東北電力宮城県牡鹿郡女川町・石巻市平成7年(1995)東海第二発電所日本原子力発電茨城県那珂郡東海村昭和53年(1978)柏崎刈羽 (かしわざきかりわ) 原子力発電所東京電力新潟県柏崎市・刈羽郡刈羽村昭和60年(1985)志賀 (しか) 原子力発電所北陸電力石川県羽咋郡志賀町平成5年(1993)美浜発電所(3号機)関西電力福井県三方郡美浜町昭和51年(1976)大飯 (おおい) 発電所(3・4号機)関西電力福井県大飯郡おおい町平成3年(1991)高浜発電所関西電力福井県大飯郡高浜町昭和49年(1974)敦賀発電所(2号機)日本原子力発電福井県敦賀市昭和62年(1987)浜岡原子力発電所(3〜5号機)中部電力静岡県御前崎市昭和62年(1987)島根原子力発電所(2号機)中国電力島根県松江市鹿島町平成元年(1989)伊方発電所(3号機)四国電力愛媛県西宇和郡伊方町平成6年(1994)玄海原子力発電所(3・4号機)九州電力佐賀県東松浦郡玄海町平成6年(1994)川内 (せんだい) 原子力発電所九州電力鹿児島県薩摩川内市昭和59年(1984)廃止措置中名称電気事業者立地場所運転終了年女川原子力発電所(1号機)東北電力宮城県牡鹿郡女川町・石巻市平成30年(2018)福島第一原子力発電所(1〜4号機)東京電力福島県双葉郡大熊町平成24年(2012)福島第一原子力発電所(5・6号機)東京電力福島県双葉郡双葉町平成26年(2014)福島第二原子力発電所東京電力福島県双葉郡富岡町・楢葉町令和元年(2019)東海発電所日本原子力発電茨城県那珂郡東海村平成10年(1998)美浜発電所(1・2号機)関西電力福井県三方郡美浜町平成27年(2015)敦賀発電所(1号機)日本原子力発電福井県敦賀市平成27年(2015)大飯発電所(1・2号機)関西電力福井県大飯郡おおい町平成30年(2018)浜岡原子力発電所(1・2号機)中部電力静岡県御前崎市平成21年(2009)島根原子力発電所(1号機)中国電力島根県松江市鹿島町平成27年(2015)伊方発電所(1号機)四国電力愛媛県西宇和郡伊方町平成28年(2016)伊方発電所(2号機)四国電力愛媛県西宇和郡伊方町平成30年(2018)玄海原子力発電所(1号機)九州電力佐賀県東松浦郡玄海町平成27年(2015)玄海原子力発電所(2号機)九州電力佐賀県東松浦郡玄海町平成31年(2019)ふげん(原型炉)日本原子力研究開発機構福井県敦賀市平成15年(2003)もんじゅ(原型炉)日本原子力研究開発機構福井県敦賀市平成28年(2016)
げんしりょくほけんプール【原子力保険プール】
原子力保険についての複数の損害保険会社による引き受け共同体。原子力事故では保険金支払い額が巨額になるため、昭和35年(1960)に国内損害保険20社によって日本原子力保険プールが結成された。原子力保険はすべて日本原子力保険プールを通じて契約される。
げんしりょくロケット【原子力ロケット】
原子力エンジンを装備したロケット。
げんしろ【原子炉】
ウラン・トリウム・プルトニウムなどの核分裂性物質を燃料とし、核分裂の連鎖反応を適度に制御しながら定常的に進行させ、そのエネルギーを利用できるようにした装置。発電や船舶用の動力炉のほか、研究用・医療用など多くの用途がある。リアクター。 [補説]原子炉には、核分裂反応を利用する核分裂炉、核融合反応を利用する核融合炉、核破砕反応を利用する加速器駆動炉などがある。このうち実用化されているのは核分裂炉のみで、核分裂反応を起こす中性子の速度(エネルギー)によって熱中性子炉と高速中性子炉に分類される。熱中性子炉は、核分裂によって放出される中性子の速度を下げる減速材の種類によって軽水炉・重水炉・黒鉛炉に分類される。このうち最も多いのは軽水炉で、世界の発電用原子炉の8割以上を占める。軽水炉には、原子炉圧力容器内で高温高圧にした一次冷却水の熱で二次冷却水を蒸気に変える加圧水型原子炉(PWR)と、圧力容器内で冷却水を直接沸騰させ、その蒸気でタービンを回す沸騰水型原子炉(BWR)がある。世界全体ではPWRが軽水炉の8割を占めているが、日本では両者がほぼ同数となっている。軽水炉はウラン235の濃度を3〜5パーセントに高めた低濃縮ウランを燃料として使用するが、重水炉は、中性子を吸収しづらい重水を用いるため、天然ウランをそのまま使用することができる。現在、運用されている重水炉は、冷却材にも重水を用いる加圧重水型原子炉(PHWR)で、主流のCANDU炉は開発国のカナダをはじめインド・韓国・中国・ルーマニアなどで導入されている。黒鉛炉には、冷却材に炭酸ガスを用いる黒鉛減速ガス冷却炉(GCR)と、沸騰軽水を用いる黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉(LWGR)があり、それぞれ開発国の英国(GCR)、ロシア(LWGR)で運用されている。高速中性子炉は、核分裂によって放出される中性子を減速させずに利用する高速炉で、高速中性子による核分裂連鎖反応を利用した高速増殖炉(FBR)がロシアや中国で稼働している。日本で開発中のもんじゅは事故や保守管理の不備により長期間停止している。世界各国で運用されている発電用原子炉炉型炉数電気出力(MWe)主な導入国減速材冷却材燃料加圧水型原子炉(PWR)278258,215米国・フランス・日本・ロシア・中国・韓国・ウクライナ・スウェーデン・英国・インドなど軽水軽水(非沸騰)低濃縮ウラン沸騰水型原子炉(BWR)8075,353米国・日本・スウェーデン・インドなど軽水軽水(沸騰)低濃縮ウラン加圧重水炉(PHWR)4924,549カナダ・インド・中国・韓国など重水重水(非沸騰)天然ウラン黒鉛減速ガス冷却炉(GCR)158,045英国黒鉛炭酸ガス天然ウラン/低濃縮ウラン黒鉛減速軽水冷却炉(LWGR)1510,219ロシア黒鉛軽水(沸騰)低濃縮ウラン高速増殖炉(FBR)2580ロシア・中国—液体金属ナトリウム濃縮ウラン/ウラン・プルトニウム混合合計439376,961 燃料IAEAの動力炉情報システム「PRIS」より。一時停止中の原子炉を含む(2015年3月)。発電用原子炉の開発世代による分類開発世代年代・特徴主な炉型第1世代1950〜60年代前半に開発された初期の原子炉シッピングポート原発の加圧水型炉・ドレスデン原発の沸騰水型炉原子炉・コールダーホール原発のマグノックス炉など第2世代1960年代後半〜90年代前半に建設された商業用原子炉加圧水型原子炉(PWR)・沸騰水型原子炉(BWR)・CANDU炉(カナダ型重水炉)・改良型ガス冷却炉(AGR)・ロシア型加圧水型炉(VVER)・黒鉛減速沸騰軽水冷却炉(LWGR)など第3世代第2世代炉の改良型として開発され、1990年代後半〜2010年代に運転を開始した原子炉改良型沸騰水型炉(ABWR)・改良型加圧水型炉(APWR)・System80+など第3世代プラス2010〜30年頃までに導入される、第3世代炉の経済性を向上させた原子炉高経済性単純化沸騰水型炉(ESBWR)・欧加圧水型炉(EPR)・AP1000など第4世代2030年頃の実用化を目指して開発中の、より高度な経済性・安全性・持続可能性・核拡散抵抗性を備えた原子炉ナトリウム冷却高速炉・高温ガス冷却炉・超臨界圧水冷却炉・ガス冷却高速炉・鉛冷却高速炉・溶融塩炉など
げんしろえいせい【原子炉衛星】
小型の原子炉を動力装置として積んでいる人工衛星。
げんしろかくのうようき【原子炉格納容器】
原子炉の主要設備を格納する鋼鉄またはコンクリート製の施設。密閉性・耐圧性が高く、原子炉圧力容器のほか、加圧器、循環ポンプ、冷却装置などを収容する。万一、原子炉で事故が起きた場合に、放射性物質の漏洩 (ろうえい) を抑える役割を果たすもので、コンクリート造りの原子炉建屋に収められている。五重の壁の第四の壁にあたる。格納容器。
げんしろん【原子論】
世界は空虚な空間と無数の不可分な原子からなり、同種原子の離合集散に応じて感覚的物質が形成されるとする、古代ギリシャに始まる哲学説。19世紀になって、元素はそれぞれ一定の性質および質量をもつ原子からなり、化合物は原子が結合した分子からなるという説をJ=ドルトンが実証、現代原子概念の基礎をつくった。アトミズム。→原子説
げんしかくエネルギー【原子核エネルギー】
⇒核エネルギー