・・・若し当初に於て誤ったものでないならば、彼等は老年、死に到る迄、胸の底深く純粋な友愛を失うことはないのです。 けれども、ここに私共の考えなければならないことは、現在の日本の夫婦間には著しく欠乏している友情が彼等に於ては感情の基礎となってい・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・「ロマンチックな友愛」を考えていたのであった。 実際の結婚、姙娠、子供を産み食物と着物とを良人にたよってそのために永劫命令されて生きなければならない女の地獄に対する恐怖、悲痛、憎悪の感情。愛という名を通じていつの間にか自分をそこにひき込・・・ 宮本百合子 「中国に於ける二人のアメリカ婦人」
・・・彼は、卓抜な芸術上の同時代人たちとの友愛をたのしみ得た作家であったのだろうか? 尊敬され、或は畏怖される文学上の同輩であったろうか。 私共はここにおいて実に興味ある一つの現実に遭遇する。それは、バルザックが一八三〇年代からフランス文学に・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・見で、現在日本の三十代の女はロマンティストで人道主義で、たとえば結婚についても、恋愛から結婚という風なものを考えて、いろいろの悲劇をもかえってひき起すような工合だが、今、二十前後の若い女は大へん違って友愛的な恋愛は沢山するだろうが、結婚など・・・ 宮本百合子 「不満と希望」
・・・人々は漱石に対する敬愛によって集まっているのではあるが、しかしこの敬愛の共同はやがて友愛的な結合を媒介することになる。人々は他の場合にはそこまで達し得なかったような親しみを、漱石のおかげで互いに感じ合うようになる。従ってこの集まりは友情の交・・・ 和辻哲郎 「漱石の人物」
出典:青空文庫