・・・の事に参与するの法を定めたりしに、その時にあたりて識者の考に、今後議院の権は役夫・職人の手に帰し、あるいは害あるべしといい、あるいは益あるべしといい、議論喋々たりしが、その成跡を見れば、いずれも無益の取越し苦労なり。改革の後も役夫・職人の輩・・・ 福沢諭吉 「学者安心論」
・・・己の喜だの悲だのというものは、本当の喜や悲でなくって、謂わば未来の人生の影を取り越して写したものか、さもなくば本当に味のある万有のうつろな図のようなものであって、己はつまり影と相撲を取っていたので、己の慾という慾は何の味をも知らずに夢の中に・・・ 著:ホーフマンスタールフーゴー・フォン 訳:森鴎外 「痴人と死と」
出典:青空文庫