・・・ しかし、不愉快な顔を見せるのは、焼き餅と見えるから、僕の出来ないことだし、出来ないと言っても、全くこれを心から取り除くことはなし得なかった。これを耐え忍ぶのは、僕がこれまで見せて来た快濶の態度に対しても、実に苦痛であった。しかし、その・・・ 岩野泡鳴 「耽溺」
・・・つまり、その戦争は、主として、封建的専制主義及び外国の支配拘束を取り除くことであった。それは進歩的戦争であった。又、イギリスに対して若し××が戦争を始めるとしたら、それは正当な、必要な戦争である。抑圧者、搾取者に対する、被圧迫階級の戦争には・・・ 黒島伝治 「反戦文学論」
・・・ 採集した綿の中に包まれている種子を取り除く時に、「みくり」と称する器械にかける。これは言わば簡単なローラーであって、二つの反対に回る樫材の円筒の間隙に棉実を食い込ませると、綿の繊維の部分が食い込まれ食い取られて向こう側へ落ち、堅くてロ・・・ 寺田寅彦 「糸車」
・・・然し人間的なまた社会的な悲劇の一つの典型と見た場合、法律の及ぶ範囲が必ずしも人間の悲劇、特に今日の社会で経済的にも精神的にも防衛の少い若い女の誠に落ち入り易い悲惨事の原因までを取り除く事が出来にくいと云う事を残念に思う次第です。また作者とし・・・ 宮本百合子 「「女の一生」と志賀暁子の場合」
・・・街路から電線を取り除くことが不可能であるならば、電線は街路樹の枝の下に来べきものであって、梢を抑えるべきものではない。従って街路樹が電線の高さを乗り超え得るように工夫してやるべきである。そうでない限りいわゆる街路樹なるものは、松並み木、杉並・・・ 和辻哲郎 「城」
・・・私の心がある人の不幸に同情して興奮する、私は急いでその不幸を取り除くために駈け出す。私の心が自然の美に打たれて興奮する、私は喜びを現わさないではいられない。すなわち我々の生命活動は何らかの形で自己を表現することにほかならない。 我々が意・・・ 和辻哲郎 「創作の心理について」
出典:青空文庫