・・・そして此の心を持って自然を見主観に映じた色彩、主観に入った自然の姿、此れが即ち人間生活の絶対的経験という立場から凡ての刺戟を受け入れて日常生活の経験を豊富にするという、それが為めの努力、此れが人生を楽しむ努力であると思う。 併し、如上の・・・ 小川未明 「絶望より生ずる文芸」
・・・書いてみて、それが相手に受け入れられなかったら、もうどう仕様もないことですし、これから書こうと思っている小説を、どんなにパッションもって語っても、いまのところ私は、そんなに優秀の大傑作、書けないのが、わかっていますし、現在の私の作家としての・・・ 太宰治 「正直ノオト」
・・・そんな天変地異をも平気で受け入れ得た彼自身の自棄が淋しかったのだ。 そんなら自分は、一生涯こんな憂鬱と戦い、そうして死んで行くということに成るんだな、と思えばおのが身がいじらしくもあった。青い稲田が一時にぽっと霞んだ。泣いたのだ。彼・・・ 太宰治 「葉」
・・・それを学生のいうことでも馬鹿にしないで真面目に受け入れて、学問のためには赤子も大人も区別しない先生の態度に感激したりした。こういう本格的な研究仕事を手伝わされたことがどんなに仕合せであったかということを、本当に十分に估価し玩味するためにはそ・・・ 寺田寅彦 「科学に志す人へ」
・・・そういう科学教育が普遍となりすべての生徒がそれをそのまま素直に受け入れたとしたら、世界の科学はおそらくそれきり進歩を止めてしまうに相違ない。 通俗科学などと称するものがやはり同様である。「科学ファン」を喜ばすだけであって、ほ・・・ 寺田寅彦 「化け物の進化」
・・・何となれば、幾何学においては、その根本概念が感官的直観と一致するが故に、それは何人にも受入れられるが、形而上学的問題においては、最始の根本概念を明晰に判明に把握することが困難なのである。本来の性質からは、それは幾何学のものよりも、一層明晰な・・・ 西田幾多郎 「デカルト哲学について」
・・・て来て、欲ばるとこんな目に会うぞという教訓を与えようとする場合、たれの心にでも、つまりどんな地位、階級のものにでもめいめいの立場によって生じる主観的な実際行為の正常化を前もって封じて、いおうとする話を受け入れさせるために、例え話の形をとった・・・ 宮本百合子 「新たなプロレタリア文学」
・・・る人の表情に目がとまった時、ケーテはヨーロッパの婦人にありがちな仰々しい感歎の声ひとつ発せず、自分のすべての感覚を開放し、そこに在る人間の情緒の奔流と、その流れを物語っている肉体の強い表情とを感じとり受け入れたにちがいない。さもなくて、どう・・・ 宮本百合子 「ケーテ・コルヴィッツの画業」
・・・大衆的にも或る程度まで受け入れられたが、段々批判が起って、五ヵ年計画着手とともに、上演目録から削られた。理由は、脚本が中流の家庭生活というものをちっとも革命的歴史の進行の角度から批判せず、ただ現象的に描写している。根本的な社会変革につれて起・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・は社会が男に対するとは違うから、実行が男ほど大ぴらでないし、ある意味では突入っても行かないし、矢張り結婚して見れば、結婚以前のいろいろのことはその結婚生活をより豊富にしたり、真剣なものとする存在として受入れられないで、あり来たりな、蔭のこと・・・ 宮本百合子 「女性の生活態度」
出典:青空文庫