・・・ 一つの例にすぎないが一作家における以上のような、現実からの作品の創り出しかた及び、文学作品の世界としての現実の受け入れかたを見較べると、おのずから再び文学とは何であろうかというところ迄立ちかえって、考えさせられるものがある。「どう・・・ 宮本百合子 「生産文学の問題」
・・・私たちはそれを受け入れません。憲法は明記しています。“すべての人が良心の自由をもっているということを”〔一九四八年四月〕 宮本百合子 「世界は平和を欲す」
・・・ TさんがKを愛して居るのに、この愛が素直に受け入れられず、その境遇を代えたいのに代える実力も同情者もなく、子供にしばられて、運命にすてばちになって居る心持。 彼女が active に家のことをせず、成金くさくなって居るのは、憐れな・・・ 宮本百合子 「一九二三年夏」
・・・あの頃と異わず私を受け入れて呉れるのは春の複雑な陰翳を持つ連山と、遠くや近くの森、ゆるやかな起伏を以て地平線迄つづく耕地、渡り鳥が翔ぶ、素晴らしい夕焼け空などである。―― 自然に対して斯う云う憧憬的な気分の時、私は殆ど一種の嫌悪を以・・・ 宮本百合子 「素朴な庭」
・・・解放のひとこまとしてとりあげて描いたとしたら、二月ののちに広汎に起った物取り主義という批判そのものさえも当時あったよりはもっと複雑に労働階級を政治的に豊富にする作用をもち階級性を強める新しいバネとして受け入れられたでしょう。 民主主義文・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・ 十三の少女の心に、それほど鋭い悲しみや歓びを感じさせながら、受け入れた学校は、それから十九まで私に、どんな感化を与えたか、自分を中心にし、主観で見れば、そこには限りない追憶と、いろいろさまざまな我が姿がある。けれども、人生を深く広く客・・・ 宮本百合子 「入学試験前後」
・・・や小市民的な技術家が勤労者として精神的にも再教育されて来たソヴェトの社会的現実の上に立って、芸術の創作方法としての社会主義的リアリズムが称えられて来ているのであるが、日本では異った事情の上にその提唱が受け入れられた。そして、文学の面では或る・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムへの道」
・・・実に複雑な生活の上に起るさまざまの事件、さまざまの気持、さまざまの人間関係などは、多くの人にとってその本質的な意味を考えたり、ちらりと心にひらめいた感じを追求してそれを事柄の本質にまで追いつめて自分に受け入れてゆくということはできなくて、一・・・ 宮本百合子 「平和運動と文学者」
・・・彼らはその理想さえ主張出来得れば、曾て犯した唯心論的文学の古き様式をさえも、唯々諾々として受け入れているではないか。そこで、彼らは、文学の圏内に於ては、ただ単なる理想主義文学と何ら変る所はない。 それで果して文学的活動は正当さを主張・・・ 横光利一 「新感覚派とコンミニズム文学」
・・・そうしてそういう都市は、仏教を受け入れ、それをその独自の立場で発展させることをさえも企てていたのである。仏教美術がそこで作られたことももちろんであるが、木材や石材に乏しいこの地方において、漆喰と泥土とを使う塑像のやり方が特に歓迎せられたであ・・・ 和辻哲郎 「麦積山塑像の示唆するもの」
出典:青空文庫