・・・ 三十一日 Avery で隣の区切りにグランパが来る。背中を見せて居る。自分の心持。二月 一日 Ideal husband を Miss Wells と見る。 二日 日曜。始めて Jefferson の説教を聞く。・・・ 宮本百合子 「「黄銅時代」創作メモ」
・・・丁度、図書館の書物蔵のように、高くまで大きな箱が幾通りにも立ち、バタン、バタンと賑に落ちる蓋つきの小さい区切りが、幾十となく、名札をつけて並んでいるのである。 下のタタキに下駄の音をさせてその間に入り、塵くさいような、悪戯のような匂いを・・・ 宮本百合子 「思い出すかずかず」
・・・二万円の区切りは今日の円で二千円だといえばきわめて広汎な家庭が包括されて来るのである。 実にわかりやすく懐に突込まれる手の形を解説されたのであるが、主婦たちは、どんな感想をもって、これを聴いたであろうか。税のことは男の世界のこととして聴・・・ 宮本百合子 「女の手帖」
・・・ 一寸言葉を区切り、やや早口で、「――無事らしいね」 彼が誰のことを云っているか分って、私は口に云えぬ感じに捕えられ、黙って大きく深く合点をした。 特高が留置場へ来た。 自分を出させ、紺木綿の風呂敷でしばった空弁当が・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・どこを区切りにしたって違った色の血は私の体の中を流れて居はしないのだから、ね。 あなたの方の御工合はいかがですか。すこしはましになりましたか? 私は病気になったりしたのを恥しく思う心持があります。勿論過労からであったにしろ。やっぱり自分・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・主主義の実体は不明確にしかつかまれていなかったけれども、ともかく人民が人民の幸福のために求め、たたかい建設してゆくことの当然を次第に理解しはじめてあけた一九四六年の春から一九四七年の二月ごろまでのひと区切りが、日本民主化の第二段をなしている・・・ 宮本百合子 「三年たった今日」
・・・此程、単純な平面に区切りをつけるに苦心を要するのを考えると母上が、まるでプランを理解されない血統を牽いたのか。可笑しい。 宮本百合子 「小さき家の生活」
・・・ スースーとちょっとずつ区切りをつけながら、蜘蛛が糸を下げるように、だんだんと真暗な底の知らないところへ体が落ちて行くように感じながら、どうしても自分で頭を擡げることの出来ないでいた禰宜様宮田は、このときハッと思うと同時に、急に自分の体・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
・・・低いふざけたような音は、そこから、どこまでと云う区切りをつけられないほど広くから起って来た。そしてワラーのおしまいが、ウーンといつまでも尾を引いて、空の真中にのこって居るように思った。 信夫山と阿武隈川 昔ジャイアントが居た。 ・・・ 宮本百合子 「「禰宜様宮田」創作メモ」
・・・ ここいらでは東京弁を使う人には一種異った感じを持つ様な調子の村なので句切り句切りのはっきりした少し荒い様な東京弁は、小作人などの耳には、妙に更まる気持を起させるのであった。「来年きっとなすなすと云って今までに十五俵も貸してある・・・ 宮本百合子 「農村」
出典:青空文庫