・・・気がついて見ると、それは切符の台紙のボール紙の厚みが著しく薄くなっていたのである。そうして、それから後は現在までずっと薄くなったままで継続しているような気がするのであるが、事実はどうだかたしかでない。 とにかく、その突然の変化の起こった・・・ 寺田寅彦 「破片」
・・・ブリュウゲルの写真版のいいのがあってペンさんが貸してくれ、台紙に入れて今日出来上りました。この画家の健全な面が発揮された絵で収穫の図です。色彩も非常に新鮮です。お目にかけられないのがざんねん。 十一月十八日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・一日に一銭でも、二銭でも、切手を買って貼りつけていって、台紙が一杯につまると、郵便局へもってゆく。そんなやりかたであったように思う。その頃は、十銭の郵便切手を買うことは一年のうちにめったになかった。十銭の切手は外国郵便につかわれたのだから。・・・ 宮本百合子 「郵便切手」
出典:青空文庫