・・・然し、究極に於て各人の叡智と愛との根源に還る問題ではありますまいか。 人類の最も本質的な、最も純粋であるべき結婚、離婚の問題を、最初に而して最後に決する事は心です。心の如何による丈です。〔一九二一年二月〕・・・ 宮本百合子 「心ひとつ」
・・・個人としてそれらの人々がどのように歴史の現実をうけとり、それを表現し、そのことによって、進んでゆく歴史と自分との関係を、おのずから客観の証明のもとに浮き上らせてゆくことは、もとより各人の自由であると思う。 だけれども、社会と文学との諸問・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・各取引ごとに一パーセントとされているこの税も一年間の負担を通算すれば、各人四パーセントから五パーセントの支出となる。赤字家計は三千七百円ベースでは支えきれない。文化面で一冊の書籍は、これまでの定価になかった五パーセントの取引税を読者のポケッ・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・しかも、理論への情熱は主観的に高揚されて、謂わば各人各様の説を感想として主張し、そのことに於て日本のヒューマニズムの問題のおかれている多難性と、思想の多弁と浮動の激しさとを感じさせた。文化の代表者たちの上に見られたこの現象は、方向を求めつつ・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・従って、群集の各人は、箇性の力に明かな局限を認める事に馴れ、其の局限の此方でする活動が、結局は夢想でない今日の現実に於て最も有効である事を滲み込まされます。其で、所謂賢明な者は、相当に一般を首肯させる理論を前提として、最も安全な現状維持を主・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・然し、人間の主観的な感情の鏡によって、自然の姿が悲喜さまざまに観られ感受されると同時に、そのような各人の感情の発動する根源には、そのひとの住む自然が環境的な影響として力強く作用しているのである。 例えば、同じヨーロッパの中でもスペインや・・・ 宮本百合子 「自然描写における社会性について」
・・・同人たちの作家としての活動は、プロレタリア文学に反対であるという一事では、その社会的な生活感情を等しくして結ばれていたが、その他の面では云わば各人各様で、或る作家は芸術至上を説き、或る作家は科学・機械文明との新しい結合で文学を見ようとし、或・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・が、主観的な教養に育ってきたおびただしい理性は、各人のその屈辱的立場を自分にとって納得させやすくするために、暴力に屈して屈しない知性の高貴性や、内在的自我の評価或はシニシズムにすがって、現実の市民的態度では、いちように「大人気ない抵抗」を放・・・ 宮本百合子 「世紀の「分別」」
・・・それに対して漠然直感されている各人の日頃からの感想というようなものも、その題への一瞥と同時に動かされて来るのを感じると思う。自分たちが嘗てはそのものであった学生、兄や弟や仲間たちが皆そうである学生、よろこんだり悲しんだり不幸をもったりして成・・・ 宮本百合子 「生態の流行」
・・・ 今日の情勢は、ブルジョア作家の各人の日常の生活現実にも影響して、その経済的基礎を脅かし、思想の自由を抑圧している。プロレタリアートの組織は極度に破壊されているし、よしんばそれがどこかにあったとしても小市民的インテリゲンチアの日常の救い・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
出典:青空文庫