・・・けれども、原稿料にしろ印税にしろ、自分ひとりの力で得たと思ってはいけないのだ、みんなの合作と思わなければならぬ、みんなでわけるのこそ正しい態度かも知れぬ、と思ったりした。 母も叔母も、私の実力を一向にみとめてくれないので、私は、やや、あ・・・ 太宰治 「帰去来」
・・・サインを消せみんなみんなの合作だおまえのもの私のものみんなが心配して心配して やっと咲かせた花一輪ひとりじめは ひどいどれどれわしに貸してごらんやっぱりじいさんひとりじ・・・ 太宰治 「HUMAN LOST」
・・・そのような、かれら五人の合作の「小説」が、すでに四、五篇も、たまっている筈である。たまには、祖父、祖母、母もお手伝いする事になっている。このたびの、やや長い物語にも、やはり、祖父、祖母、母のお手伝いが在るようである。 そ・・・ 太宰治 「ろまん燈籠」
・・・この選択を決定する標準はもはや必ずしも普遍的単義的なものではなくて、学者の学的常識や内察や勘や、ともかくも厳密な意味では科学的でない因子の総合作用によってはじめて成立するものである。もちろんその省略が妥当であったかどうかを、最後にもう一度吟・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・ たしか浅井和田両画伯の合作であったかと思うがフランスのグレーの田舎へ絵をかきに行った日記のようなものなども実に清新な薫りの高い読物であった。その内容はすっかり忘れてしまったが、それを読んだときに身に沁みた平和で美しいフランスの田舎の雰・・・ 寺田寅彦 「明治三十二年頃」
・・・ 漢詩でもたまには数人の合作になるものはあるようである。近ごろはひとつづきの小説を数人の作者が書き続けて行くのもあるようである。これらの場合その作者たちにとっては、行く先がどういうふうに成り行くものか見当がつかないで、そうしていろいろと・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・という諷刺小説を書いたイリフ、ペトロフ合作の長篇である。ジャーナリスト出身のペトロフが素材をあつめることを主に働き、詩人であるイリフが作品として書きあげてゆくという、新しい仕事ぶりで七年ほど前に完成された作品である。 主人公はオスタップ・・・ 宮本百合子 「音楽の民族性と諷刺」
・・・の作家たちが時々やる労働者との合作とは又ちがって深い実践的な階級的基礎をもっている。 彼等は文学活動の必要のためだけに集ったのではない。ある一つの工場が五ヵ年計画を基本とした自身の生産プランを大衆的に受け入れた瞬間から今日まで、そこの仲・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・なかなかしっかりしたよい名で好評です、合作ですね。 今日寿江子が帰ります、そちらに行ける人が出来て私はやっとホッと致します。 隆治さんが二十五日から九日までうちへ泊ってそれからまた南へ行くということが友子さんと母上のお便りでわかりま・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・は出版社の人々と著者の合作でつくられたものであったことも知られた。参議院の考査委員会は、永井隆氏を表彰しようという案を発表したが、六月十二日、七月三日の週刊朝日は、カソリック教徒であるこのひとの四つの著書が、それぞれにちがった筆者であるとい・・・ 宮本百合子 「ことの真実」
出典:青空文庫