・・・実際その時の佐佐木君の勢は君と同姓の蒙古王の子孫かと思う位だったのです。小島君も江戸っ児ですから、啖呵を切ることはうまいようです。しかし小島君の喧嘩をする図などはどうも想像に浮びません。それから又どちらも勉強家です。佐佐木君は二三日前にこゝ・・・ 芥川竜之介 「剛才人と柔才人と」
・・・ それは、自分と同姓の、しかも自分とは一廻り下の同じ亥年の二十六歳の、K刑務所に服役中の青年囚徒からの手紙だった。彼の郷国も、罪名も、刑期も書いてはなかったが、しかしとにかく十九の年からもう七年もいて、まだいつごろ出られるとも書いてない・・・ 葛西善蔵 「死児を産む」
・・・お母さんは感慨めいた調子で言った。同姓間の家運の移り変りが、寺へ来てみると明瞭であった。 最後まで残った私と弟、妻の父、妻と娘たちとの六人は、停車場まで自動車で送られ、待合室で彼女たちと別れて、彼女たちとは反対の方角の二つ目の駅のOとい・・・ 葛西善蔵 「父の葬式」
・・・これだけでは何も問題にはならないが、しかしその某家と同姓の家が宅から二、三町のところにあるから、そこで一つの問題が成立ったのである。その問題は型式的には刑事探偵が偶には出くわす問題とおなじようなものかと思われた。 問題を分析するとつぎの・・・ 寺田寅彦 「ある探偵事件」
・・・伊藤痴遊であったかと思う、若いのに漆黒の頬髯をはやした新講談師が、維新時代の実歴談を話して聞かせているうちに、偶然自分と同姓の人物の話が出て来た。Sが笑い出したら、講談師も気がついたか自分の顔ばかり見ながらにやにやして話をつづけた。 銀・・・ 寺田寅彦 「銀座アルプス」
・・・然れども婦人の心正しく行儀能して妬心なくば、去ずとも同姓の子を養ふべし。或は妾に子あらば妻に子なくとも去に及ばず。三には淫乱なれば去る。四には悋気深ければ去る。五に癩病などの悪き疾あれば去る。六に多言にて慎なく物いひ過すは、親類とも中悪く成・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・このことは、ただ彼が成功した一人の素人作家であって、十九世紀ロシアのリアリスト劇作家オストロフスキーと、輝やかしい同姓異人であるということだけではない。除村吉太郎氏の紹介に記されているソヴェト同盟の第一次五ヵ年計画達成以後の文学的年代は、そ・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・然れども婦人の心正しく行儀能して妬心なくば去ずとも同姓の子を養うべし。或は妾に子あらば妻に子なくとも去に及ばず。三には淫乱なれば去る。四には悋気深ければ去る。五に癩病などの悪き病あらば去る。六に多言にて慎なく物いい過すは親類とも中悪く成り家・・・ 宮本百合子 「三つの「女大学」」
・・・ その時、秋三はふと勘次の家と安次の家とは同姓で、その二家以外に村には谷川と名附けられる姓の一軒もないのに気がついた。してみれば、今安次を勘次の家へ、株内と云う口実で連れていったとしたならば? 勘次の母の吝嗇加減を知っていればそれだけ、・・・ 横光利一 「南北」
出典:青空文庫