明治十八年夏の頃、『時事新報』に「日本婦人論」と題して、婦人の身は男子と同等たるべし、夫婦家に居て、男子のみ独り快楽を専らにし独り威張るべきにあらず云々の旨を記して、数日の社説に掲げ、また十九年五月の『時事新報』「男女交際・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・その大門をくぐれば、武士も町人も同等な男となって、太夫の選択にうけみでなければならない廓のしきたりがつくられたのも、町人がせめても金の力で、人間平等の領域を保とうとしたことによった。大名生活を競って手のこんだ粉飾と礼儀と華美をかさねたその場・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・これ等数人が各々ぬきさしならぬ同等の役割で村の反革命分子と闘い、集団化を完成に導いてゆく。 カターエフの作品とくらべて特に面白いのは、一方がいかにもインテリゲンチアの作家によってかかれた戯曲らしく整っていて、同時に農民の描写が観念的なの・・・ 宮本百合子 「インターナショナルとともに」
・・・が今度の戦乱に際して、婦人の活動が男子同等の能権を持ち得る事を示したのは、皆此点に*して居ります。良人を送り、同胞を送った女性に、今まで持たなかった力が奇蹟的に湧いたのでない事を私共は考えなければなりません。人は、米国婦人の見識ある事、教養・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・けれども、日本の社会の実際は、女の向上を等閑にして数百年を経て来ているのだから、男と同等の程度に女の学問がおよぶためには相当の年月がいるであろうと見ている。「文明普通の常識」程度として、「ことに我輩が日本女子に限りて是非ともその知識を開・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・村の生活では若い者と年輩の者との順位というものはきびしく、村民の寄合いの席順から発言の権利まで同等ではない。都会の工場労働者は、大人になった熟練工よりも、青年工を使った方が賃銀が安いということから、いつも青年労働者を多く使う。または女を使う・・・ 宮本百合子 「青年の生きる道」
・・・憲法で、男女同等の基本的人権が認められるようになった。それに準じて変更される民法の結婚の規定は、これまでの民法の矛盾をとりのぞいた。結婚しようとする当事者たちの意志できめられるというのは、さわやかにはればれした人生の門出を予約するように感じ・・・ 宮本百合子 「世界の寡婦」
・・・同じ賃銀を払うということは同等の技術を要する。だから女の技術が実際男と同じ熟練工でなければ、事実上の賃銀というものは低いわけです。で、女の労働者の中では、熟練工の少いということは、非常に自分達の文化の低いこととして一生懸命その技術向上に努力・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
・・・ 或る年になれば、親子は、完全に同等になります。自分を胎のうちから愛し育てて呉れた者と云うつきない愛、信頼によって、他に比類ない深甚な友愛によって結ばれた横の関係となるのです。何歳になっても、親子、と云うやや階級的な段ではありません。も・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・例えば、民主的な社会の特長である徹底した男女同権が実現されれば、そして勤労に対する報酬も、能力を発揮する機会も、婦人にとって全く男と同等になれば、その結果結婚を望む婦人が減って、離婚も増し、家庭というものが崩潰するだろうという見通しを語る人・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
出典:青空文庫