・・・は書き改められる、材料が惜しいと宇野氏が評しているが、書き改めるということの核心は、作者が現実と自分との角度をしゃんと明瞭にして姿勢を立て直し、改めてかかる、ということと同義なのである。 この作品評で、宇野氏が生態の描写ということをよく・・・ 宮本百合子 「今日の文学の諸相」
・・・当時、既に正宗白鳥氏その他が現在保護と監視は同義語であるとして、「文学者がさもしい根性を出して俗界の強権者の保護を求めたりするのは藪蛇の結果になりそうに私には想像される」と云った。 文芸院はその後形を変えて「文芸懇話会」となり、文芸院が・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・詩人らしいということは、線が細いと同義語のようにつかわれ、いくらか鋭い感受性といささかの主観のつよさと、早期の枯凋とを意味するとしたら、それは人間としてくちおしいことだと思う。 習俗のつよい圧力は、女が詩をつくる心をもって生れたという一・・・ 宮本百合子 「『静かなる愛』と『諸国の天女』」
・・・国家が芸術なんかを保護しなかったのはかえってよかった、現在保護と監視は同義語である、と説破しているところは、やはり自然主義作家正宗の進歩性がそのおもかげをのこしていると感じられて愉快である。 けれども、白鳥は、荷風の人となりと「ひかげの・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・女がこんな風なのは、という言葉とその意味とは、社会がこんな風なのは、の同義語としてあらわされてもいる。 一九四五年八月からあと、日本の社会生活には女がこんな風なのは、つまり社会がこんな風なのは一体どこがわるくて、何がそうさせるのだろう、・・・ 宮本百合子 「壺井栄作品集『暦』解説」
・・・勤労大衆は、自分の社会的勤労の価値を自覚すればするほど、自分の人間のねうちに目ざめ、俺の意見に自信をもち、俺たちの組織に確信を得、そして、勤労階級の発展のための希望と実行を、自分の一生の発展と希望との同義語として心に抱いて来る。 まとも・・・ 宮本百合子 「文化生産者としての自覚」
・・・ロンドンで病院と云えばほとんど無料病院の同義語ではないか、と。たしかにイギリス人は公共慈善事業への応分の寄附は、犬一匹飼えば七シリング六ペンスの税を払わなければならないと同様定期支出の一部と認める伝統をもって来た。しかし本来の性質上その英国・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
・・・すなわち我々にとっては皇室は日本帝国と同義であった。皇室に対して忠であることは、「一旦緩急あれば義勇公に奉ずる」ことであった。対内的でなくして対外的であった。徳川時代の主従関係のように個人的なものではなく、対国家の関係であった。これだけの相・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
・・・と対立せしめた意味の、あるいは「精神」「文化」などに対立せしめた意味の、哲学的用語ではない。むしろ「生」と同義にさえ解せられる所の、人生自然全体を包括した、我々の「対象の世界」の名である。それは我々の感覚に訴えるすべての要素を含むとともに、・・・ 和辻哲郎 「「自然」を深めよ」
・・・彼らを愛することは、私には腐敗を愛することと同義になった。彼らを愛したという記憶は自分が腐敗したという記憶にほかならなくなった。この記憶ある限り私は、時々自分の人格を疑わないではいられない。腐敗を憎む限り私は、彼らをも憎まないではいられない・・・ 和辻哲郎 「転向」
出典:青空文庫