・・・――(同音に囃画工 こうなりゃ凧絵だ、提灯屋だ。そりゃ、しゃくるぞ、水汲むぞ、べっかっこだ。小児等の糸を引いて駈るがままに、ふらふらと舞台を飛廻り、やがて、樹根にどうとなりて、切なき呼吸つく。暮色到る。小児三 凧は切・・・ 泉鏡花 「紅玉」
・・・と、波と風とはますます暴れて、この艀をば弄ばんと企てたり。 乗合は悲鳴して打騒ぎぬ。八人の船子は効無き櫓柄に縋りて、「南無金毘羅大権現!」と同音に念ずる時、胴の間の辺に雷のごとき声ありて、「取舵!」 舳櫓の船子は海上鎮護の神・・・ 泉鏡花 「取舵」
・・・声が一所で、同音に、もぐらもちが昇天しようと、水道の鉄管を躍り抜けそうな響きで、片側一条、夜が鳴って、哄と云う。時ならぬに、木の葉が散って、霧の海に不知火と見える灯の間を白く飛ぶ。 なごりに煎豆屋が、かッと笑う、と遠くで凄まじく犬が吠え・・・ 泉鏡花 「露肆」
・・・との説もある。この aug がアキとは少し似ている。「あげる」「大きい」なども連想される。 秋が現在の日本流では、「収」「聚」と同音である。 冬は「冷ゆ」に通じ「氷」に通じ χι※ マレイの kpala は「かむり」「かぶり」の類で・・・ 寺田寅彦 「言葉の不思議」
・・・多いこと、同じ音で偏だけ異なっているのは偏によって意味の違いを表示したもので、発音的には同一語にほかならないこと、従って一つの音を表示する基準的な文字があれば、象形的に全然つながりのない語に対しても、同音である限りその文字が襲用せられている・・・ 和辻哲郎 「露伴先生の思い出」
出典:青空文庫