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・・・と云う、含み声の答があって、そっと障子を開けながら、入口の梱に膝をついたのは、憐しい十七八の娘です。成程これじゃ、泰さんが、「驚くな」と云ったのも、さらに不思議はありません。色の白い、鼻筋の透った、生際の美しい細面で、殊に眼が水々しい。――・・・
芥川竜之介
「妖婆」
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・・・ カッコー……カッコー…… しとやかな含み声の閑古鳥の声が、どこからか聞える。 常春藤が木の梢からのび上って見上げようとし、ところどころに咲く白百合は、キラキラ輝きながら手招きをする。 六はもう、得意と嬉しさで有頂天になって・・・
宮本百合子
「禰宜様宮田」