・・・古典を現代の滋養とするために何より大事なのは、より広くより深く歴史の動向に沿うて、社会生活の足あととしての古典を含味・批判・摂取することである。バルザックに還れと叫ぶ人々が、バルザックへ戻る前に既にそれをかみこなす自分らの歯を我から不要のも・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・これは世界文学史的な現象としてまじめに観察され、含味されなければならないことではなかろうか。 資本主義の社会で、芸術上の才能がその発展開花のためにふさわしい条件をもつということは、その可能の大部分をつねに境遇の偶然にゆだねられている。そ・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・そしてその短い言葉を含味するにつれ、素朴に表現されたその感想の中には、作家ツルゲーネフという人の生活なり当時の社会と彼との関係なりを今日のわたし達の目で理解する上に興味ある暗示がふくまれていることを感じるのである。 イン・ツルゲーネ・・・ 宮本百合子 「ツルゲーネフの生きかた」
・・・ バルザックの文体を含味する余裕、その諸要素を理解し分析する力の積極性においては、同時代人の中でも、後に自然主義文学に基礎を与えたテエヌが流石に立ちまさった見解を示している。サント・ブウヴは、バルザックが「従妹ベット」の中のパンセラスに・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・の面をも十分に自ら含味されなければならないでしょう。 新協の俳優が、他のどの劇団にもない歴史的な立場と任務とを持っていることは明らかであり、その自覚から各人が人及び芸術家として、日本の過去の如何なる名優も持たなかった希望と誇りとを持つこ・・・ 宮本百合子 「一つの感想」
・・・この数言に何と含味すべき豊富な歴史性が包含されていることであろう。〔一九三七年八月〕 宮本百合子 「「ラジオ黄金時代」の底潮」
出典:青空文庫