・・・利休以外にも英俊は存在したが、少は差があっても、皆大体においては利休と相呼応し相追随した人であって、利休は衆星の中に月の如く輝き、群魚を率いる先頭魚となって悠然としていたのである。秀吉が利休を寵用したのはさすが秀吉である。足利氏の時にも相阿・・・ 幸田露伴 「骨董」
・・・たとえば大新聞がいっせいにある涜職事件を書き立てると全国の新聞がこれに呼応してたちまちにして日本全国がその涜職事件でいっぱいになったような感じをいだかせる。冷静なる司直の手もまたいくぶんこれに刺激されてその活動を促進されることがないとも限ら・・・ 寺田寅彦 「ジャーナリズム雑感」
・・・○それからだんだん慣れて来たら、ようやく役者の主意の存するところもほぼ分って来たので、幾分か彼我の胸裏に呼応する或ものを認める事ができたが、いかんせん、彼らのやっている事は、とうてい今日の開明に伴った筋を演じていないのだからはなはだ気の・・・ 夏目漱石 「明治座の所感を虚子君に問れて」
・・・みんながいちどに呼応する。 さあ、もうみんな、嵐のように林の中をなきぬけて、グララアガア、グララアガア、野原の方へとんで行く。どいつもみんなきちがいだ。小さな木などは根こぎになり、藪や何かもめちゃめちゃだ。グワア グワア グワア グワア・・・ 宮沢賢治 「オツベルと象」
・・・ 政府の挑発的な暴力革命の宣伝に呼応して『展望』の八月号に猪木氏の「暴力論」がでました。レーニンの言葉を引用して、歴史の事実をゆがめ、労働者階級の任務を歪曲した議論がまとめられていることに、多くの人が驚きました。 知識欲のさかんな若・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・自身の生涯の道も、それに呼応するものでしかありえないと思える。だが、その原理の理説には、なにか人間らしいゆたかな詩情が欠けている。やさしい愛と慰藉とに欠けている。その心情的な飢渇がいやされなければ、頭脳的にわかったといっても、若い命を傾けつ・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・ この文芸復興の叫びには、プロレタリア文学の仕事に当時従っていた人々の中から呼応するものが現れたのみならず、ブルジョア文壇の数年来沈滞していた空気にも一味新鮮な刺戟を与えたように見えた。文芸復興は当時にあっては素朴な形で言われた。小説家・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・文学の傾向としてこの二者が当時相呼応するものとして現れたのには当然の理由があった。 この前後に小林秀雄が評論家として生い立って来たということもまたまことに時代的な特徴を完備している。「批評とは己れの夢を語ることだ」というのが、当時の小林・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・当時、国内国外呼応して発熱的に高まってきつつあったファシズムの暴力と圧力に対して、文化と教養に磨かれた精神はきわめて敏感であった。いつの時代でも、より精練された心情はより想像力に富んでいるから、当時の日本の知性は、ファシズムの野蛮さをめいめ・・・ 宮本百合子 「世紀の「分別」」
・・・リアリズムの問題も、プロレタリア文学運動に新たな方向を与えた社会主義的リアリズムについての究明と呼応して取りあげられたのであるが、私たちの注意をひく点は、ブルジョア文学におけるこれらの諸課題=リアリズムの問題も、外国の古典作品の研究、明治文・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
出典:青空文庫