・・・し明かに聖書の示す所を説かんことを、即ち余の説く所の明に来世的ならんことを、主の懼るべきを知り、活ける神の手に陥るの懼るべきを知り、迷信を以て嘲けらるるに拘わらず、今日と云う今日、大胆に、明白に、主の和らぎの福音を説かんことを。・・・ 内村鑑三 「聖書の読方」
・・・言行和らぎて温順なるは婦人の特色にして、一般に人の許す所なり。事に当りて男子なれば大に怒る可き場合をも、婦人は態度を慎しみ温言以て一場の笑に附し去ること多し。世間普通の例に男同士の争論喧嘩は珍らしからねど、其男子が婦人に対して争うことは稀な・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・ ラグーザ玉子の画境は、純イタリー風で、やや古典的な確かな技法とともに、こまやかな味、平和な趣の作品が多く、それはこの老婦人画家の心の景物を示すとともに、孝子夫人の求めていられた和らぎにこたえたのであろう。 二度目に上って、すこし時・・・ 宮本百合子 「白藤」
・・・ ここは、然し静かで、居心地よくて極く早い夜の和らぎが満ちている。雄鳩は不安なき眠りの悦びを感じながら優しく、「クウウウウウ」と喉を鳴らした。雌は繊い脚をあげ耳のわきをしとやかに掻いた。そして、一層ぴったり雄のそばによった。二羽・・・ 宮本百合子 「白い翼」
・・・彼女が、何とも云えず狂暴に、何とも云えず苦しさに混乱して居る様子が、自分には、云いようなく辛かった。和らぎたい心持は、溢れる程胸に満ちて居る。而も、私は仕事のことを思うと、もう親にも良人にも代えられない献身を覚え、その、わが命を守る為に、涙・・・ 宮本百合子 「二つの家を繋ぐ回想」
出典:青空文庫