・・・中古の頃この宮居のいと栄えさせたまいしより大宮郷というここの称えも出で来りしなるべく、古くは中村郷といいしとおぼしく、『和名抄』に見えたるそのとなえ今も大宮の内の小名に残れりという。この祠の祭の行わるるときは、御花圃とよぶところにて口々に歌・・・ 幸田露伴 「知々夫紀行」
・・・ 秋が現在の日本流では、「収」「聚」と同音である。 冬は「冷ゆ」に通じ「氷」に通じ χι※ マレイの kpala は「かむり」「かぶり」の類である。 和名鈔には「顱 和名加之良乃加波長 脳蓋也」とあるそうで「カハラ」は頭の事であ・・・ 寺田寅彦 「言葉の不思議」
・・・しかし舟は曳舟には限らぬので、『和名鈔』には釈名の「艇小而深者曰ていしょうにしてふかきものをきょうという」とあるきょうの字をたかせに当ててある。竹柏園文庫の『和漢船用集』を借覧するに、「おもて高く、とも、よこともにて、低く平らなるものなり」・・・ 森鴎外 「高瀬舟縁起」
・・・随って和名漢名なども無さそうだ。そこで属名のアステルに改めた。また原本の闕字について、藤代禎輔さんに相談したこともある。この話をする機会に佐佐木さんにも牧野さんにも藤代さんにもここで鳴謝する。 書物の誤が自身や友人の手で発見せられずにし・・・ 森鴎外 「訳本ファウストについて」
出典:青空文庫