・・・陳氏は笑いころげ哄笑歓呼拍手は祭場も破れるばかりでした。けれども私はあんまりこのあっけなさにぼんやりしてしまいました。あんまりぼんやりしましたので愉快なビジテリアン大祭の幻想はもうこわれました。どうかあとの所はみなさんで活動写真のおしまいの・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・ プロレタリア文学の形式の多様化の一つとして、われわれに求められているのは、愉快な階級的哄笑を爆発させるプロレタリア諷刺劇、又は諷刺小説、詩である。 例えば、左翼劇場で上演した「銅像」を、みんなどんなによろこんで観、あとまでその印象・・・ 宮本百合子 「新たなプロレタリア文学」
・・・この笑いを作者は、惨酷に甚兵衛を扱いつづけていた継母、異母弟への報復の哄笑として描き出している。義民、英雄というものに向けられて来た、盲目な崇拝の皮を剥いで示そうとしているのである。「極楽」の退屈さに苦しんで、地獄を語り合うときばかりは・・・ 宮本百合子 「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」
・・・ そんなにゴーゴリの泣き笑いとはちがう若く確信に満ちた哄笑が響いていながら、なお、この「黄金の仔牛」の読者が、しばしば、ああイリフ、ペトロフは、さすがゴーゴリの出た国の人間だけある、と思わざるを得ないというのも、実に意味ふかい実感だと思・・・ 宮本百合子 「音楽の民族性と諷刺」
・・・国人のためにもこの祭りの日と夜とを一きわ華やかにしつらえている贅沢な並木道通りからはずれ、暗いガードそばという場末街の祭の光景は、その片かげに大パリの現実的な濃い闇を添えているだけに、音楽も踊る群集も哄笑も、青や赤の色電燈の下で、実に強烈な・・・ 宮本百合子 「十四日祭の夜」
・・・一目そういう者の姿を見ると、ソヴェト同盟の大衆が謂わば階級的に用意している哄笑、嘲笑が火花のようにとび散るのだ。 成程、人形芝居をやったり、身振狂言をやったり、漫画の或る場合なんかは、こうなっていれば手っ取りばやい。一応直ぐわかる。だが・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ 彼女等は、思いのままに延びた美くしい四肢の所有者であり、朗らかな六月の微風に麗わしい髪を吹きなびかせながら哄笑する心の所有者でございます。 広大な地と、高燥な軽い空気は、自ずと住む人間の心を快活に致します。のみならず、婦人に向って・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・ ソヴェト市民が欲しがっていたのは、ハァハァと陽気闊達に笑う哄笑であり、仲間の脇腹を突つきながら、快心をもって破顔する公明正大な笑いであったのだろう。ソヴェト市民の生活感情に、そういうユーモアがないならば、イリフ、ペトロフ二人のような辛・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・の舞台の牧歌的朗らかな恋愛表現、哄笑的ナンセンスとの対照。又「D《デー》・E《エー》」の黒漆でぬたくったような暗い激しい圧力と「吼えろ! 支那」の切り石のような迫力との対照は、メイエルホリドがひととおりの才人でないことを知らされる。「お・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・淑貞の「顔一杯の嬌笑、それは驚きと喜びと情熱の哄笑です。生々とした眸、むき出された雪白の歯、こうした笑いをC女史は十年この方絶えて見たことがありませんでした」戦慄が、C女史の体を貫いて走った。名状しがたい感激がわき上った。「驚きではない、怒・・・ 宮本百合子 「春桃」
出典:青空文庫