・・・とうとう探しくたびれてしまったところ、ちょうどそのころ今里保育園の仕事に関係していた弘済会の保育部長の田所さんがこの話を聴いて、――というのは、谷口さんも当時今里保育園の仕事に関係していて田所さんと親しかったので、――これは警察に探してもら・・・ 織田作之助 「アド・バルーン」
・・・すなわち、子どもを哺育し、その世話をする労務にたえ得る母、その手のあれたるマリアでなくてはならぬ。何故なら愛は実践であり、心霊の清浄と高貴とは愛の実践によってのみ達せられるものだからである。 三 恋愛――結婚 恋・・・ 倉田百三 「女性の諸問題」
・・・ このようにわれらの郷土日本においては脚下の大地は一方においては深き慈愛をもってわれわれを保育する「母なる土地」であると同時に、またしばしば刑罰の鞭をふるってわれわれのとかく遊惰に流れやすい心を引き緊める「厳父」としての役割をも勤めるの・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・民主主義保育連盟が子供の生きてゆける場所の建設について、具体的に動こうとしはじめていることの必然が、はっきりここに示されている。 暮から東京裁判はA級被告東條英機の公判に入った。ところがこの頃、わたしたちは、電車の中で折々どういう言葉を・・・ 宮本百合子 「砂糖・健忘症」
・・・ そして、一緒に建つ姙婦健康相談所で、プロレタリア婦人の避姙の相談にものり、産院で子を生ませてもらっても、とうてい育てられないほど困った時には、附属の乳児院の方で六ヵ月乃至一年間預り、または院外保育児として、里子に出し、その費用も同院で・・・ 宮本百合子 「「市の無料産院」と「身の上相談」」
・・・赤坊のキモノや何かのための支度金を二十五ルーブリから三十五ルーブリぐらいまで貰い、出産後九ヵ月間は特別に赤坊の哺育料を貰う。「母と子の相談所」と託児所はあらゆる区に配置されている。そして労働法は生後十ヵ月までの子をもつ母親の解雇、姙娠五ヵ月・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・ 子供の哺育費というものは男の月給の中から職業組合を通して取られる。 若しその男がずるくて女が補助費を貰えない場合は、裁判をして男の親があれば、その親の家から子供哺育費を取ることが出来る。 併し土地には手を触れることは出来ない。・・・ 宮本百合子 「ソヴェトに於ける「恋愛の自由」に就て」
・・・子供の哺育費というものは男の月給の中から職業組合を通して取られる。それだけの社会的義務がある。若しその男がずるくて女が補助費を貰えない場合は、裁判をして男の親があれば、その親の家から子供の哺育費を取ることが出来る。 勿論ソヴェトでも・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
・・・ ミーチャの母さんは、労働婦人は、産前産後四ヵ月の給料つき休暇の貰えること、赤坊の仕度金と九ヵ月の特別哺育費が国庫から支出されること、産院が無料であることなどを、その簡単な言葉の中で、タマーラに思い出させたのだ。 タマーラは何とも云・・・ 宮本百合子 「楽しいソヴェトの子供」
・・・姙娠、出産、保育の仕事は、女を女として認める男女同権の社会でこそ、社会的な仕事として設備され協力される。母となる困難を社会的に経済的に保証された時、婦人にとってはじめて職業と家庭というものは、人間らしい統一でもたれる。妻は、そして子は、唯一・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
出典:青空文庫