・・・彼はその騒ぎに眠られないのを怒り、ベッドの上に横たわったまま、おお声に彼等を叱りつけた、と同時に大喀血をし、すぐに死んだとか云うことだった。僕は黒い枠のついた一枚の葉書を眺めた時、悲しさよりもむしろはかなさを感じた。「なおまた故人の所持・・・ 芥川竜之介 「彼」
・・・は佐伯の頭に喀血の色と見えるのです。 冒頭の一節、「古雑布」「古綿を千切る」「古障子」などの形容は勿論あなたのおっしゃるように視覚的ではありません。しかし、視覚的というのは絵と映画に任せて置きましょう。僕らは漬物のような色をした太陽を描・・・ 織田作之助 「吉岡芳兼様へ」
・・・朝医師を迎えの手紙を書きつつ、それが事実に合う悲しさを感ず 十二月喀血(六日の夜そのことを話す。風呂場で、妙なセキが出るのね、と云ったとき、 菌のこと、自分にうつって居るかもしれぬ事 十八九日 朝零下のこと多し○七日 寺・・・ 宮本百合子 「「伸子」創作メモ(二)」
出典:青空文庫