・・・で、伸子は、これまで人として女として自然発生にあった善意と理性が、人間行動にうつされた場合の形として、社会主義を見出している。しかし、「二つの庭」で、伸子は、まだそのような個人的善意の社会的行動に自分をゆだねてはいないのである。伸子は組織に・・・ 宮本百合子 「あとがき(『二つの庭』)」
・・・それが契機となって、わたしのぼんやりとしていた人道的善意は、次第に、自分をこめての民衆が発展する歴史の必然の方向を発見して行ったのであった。日本のプロレタリア文学運動が、社会と文学についてのその真実をわたしに知らせたのであった。「日は輝・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第一巻)」
・・・ここに転向というモメントから、多くの人々の精神が生涯の問題としてむしばまれ、根本から自主性を失って、マルクス主義者でなかったものより善意を歪められ卑屈にさせられて行った本質がある。「冬を越す蕾」は、治安維持法のこのような非道さにふれてい・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・この二つの作品は、日本のすべての人々にとって忘却することのできない治安維持法と戦争のために犠牲とされた理性と善意のために捧げられる。生けると死せるとにかかわらず、この二つの悪虐な力によって破壊を蒙った人間性の恢復と未来の勝利のためにささげら・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第七巻)」
・・・他の三人の婦人たちの善意とまじめさにみちた返事についても、ここにまた新しく生れる発展のモメントがひそめられているとも思えます。 キャナライゼーションの社会的な方法としてマス・コムュニケーションの問題もある。ラジオ、新聞、映画、広告宣伝の・・・ 宮本百合子 「アメリカ文化の問題」
・・・自分たちの愛で自分たちの善意で結合が完うされるものだという素朴な事情で考えてはいない。自分たちの心からなる希願と愛とにかかわらず、どんな突然の変化が自分たちの生の上におこるか分らない。そういう現代の嵐の中に私たちの生は営まれているのである。・・・ 宮本百合子 「家庭創造の情熱」
・・・世界の平和と正義のためにたたかい、いくたの経験をなめているキュリー夫人・ロットン夫人・クーチュリエ夫人などの活動のうちに誠実なアンネットは生きつづけているし、彼女の善意の試みやいくつかの矛盾は、より解決に向って発展させられつつある。ロマン・・・・ 宮本百合子 「彼女たち・そしてわたしたち」
・・・その親がどのように自分たちの世代を熱心に善意をもって生きて、その子らのためにどんなより美しい、よりすこやかな社会の可能をひらいてやろうとして精励したか、我が家一つの狭い利己的な封鎖的な安泰の希願からどんなに広い、社会や、世界の生活への理解と・・・ 宮本百合子 「結婚論の性格」
・・・も、素朴だけれども、結核の治癒の可能についての、明るい善意がある。二篇とも、ストレプトマイシンが無料で闘病者のベッドに訪れて来る日を待っているのは、心をうたれる。ストレプトマイシンが療養所でつかわれる日を「何日かは春に」と待っているひとは、・・・ 宮本百合子 「『健康会議』創作選評」
・・・ このたびの大統領選挙が世界の視聴を集めたのは、デューイとトルーマンとのたたかいにおいて、アメリカ民衆の民主的な意志と、世界の平和的善意、理性とがどう反映するか、そこが見ものであるからだった。重大さはそのことにあったにもかかわらず、日本・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
出典:青空文庫