・・・男と女を人民という名にくるめてこれまで抑圧してきた歴史を、根柢から新しく喜ばしいものに変えてゆこうとするために人民として協力してゆくのだと思う。〔一九四七年九月〕 宮本百合子 「明日をつくる力」
・・・ 自分の職業上、相当に位置のある家から、あまり快い感情で遇されない事は、あまり喜ばしい事ではなかった。 始めの間は栄蔵もお節も山岸とはかねがね知り合いの間だから却って話もちゃんちゃんとまとまって行きそうに思って居たが、面と向って見る・・・ 宮本百合子 「栄蔵の死」
・・・そして喜ばしいニュースが巷に飛び交っていた。マルヌの戦闘が始まってドイツ軍の攻撃は阻止された。 二人の娘たちはまだブルターニュにいた。マリアは彼女たちに向って、この新しい希望を語り「小さいシャヴァンヌに物理学の勉強をさせなさい。あなたは・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人」
・・・ 寝食を忘れて愛子を取り守って居る母親は喜ばしい安心に心からの眠りを続けて居るのです。 この二つの寝顔を見守って彼女は目をこすりながら微笑するのでした。 宮本百合子 「二月七日」
・・・そうしたら一部のものは、自分自身も、悦ばしい旋風のように動き出すだろう。ゴーリキイは、苦痛と期待との間で揺れる心で沈思するのであった。「此の自分を何とかしなければならない。さもないと、俺は破滅してしまう……」 人生の袋小路からの脱け・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・ これまでは、各団体が別々に働いていた種々のプロレタリア文化団体が今度結合して日本プロレタリア文化連盟となったのは、ほんとに悦ばしいことです。 その中に、働く婦人大衆のいろいろの文化的問題をとりあげて行く婦人協議会というのもあります・・・ 宮本百合子 「「モダン猿蟹合戦」」
・・・今その障害を除いて先生の天才を同胞の間に広めることは誠に喜ばしい企てであると思う。 岡倉先生が晩年当大学文学部において「東洋巧芸史」を講ぜられた時、自分はその聴講生の一人であった。自分の学生時代に最も深い感銘を受けたものは、この講義と大・・・ 和辻哲郎 「岡倉先生の思い出」
出典:青空文庫