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・・・文化、文学を発展させる自主的な精神力の喪失、経済事情の今日の小市民層らしい逼迫などが、微妙にからみあっているのである。小説を書く人より、小説に書かれる人の心の動きとも見えるではないか。 漱石やその後のある時期まで、作家の社会性の弱さは、・・・ 宮本百合子 「「大人の文学」論の現実性」
・・・それと同様に、一応野望的な作家の心に湧いたより活溌な、より広汎な、より社会的な文学行動への欲望が、その当然な辛苦、隠忍、客観的観察、現実批判の健康性を内外から喪失して、しかも周囲の世俗の行動性からの衝撃に動かされ、作家のより溌剌な親しみのあ・・・ 宮本百合子 「おのずから低きに」
・・・にあらわれたインテリゲンツィアとしての思想性の全くの喪失と、今日純粋小説が昔ながら通俗小説に終らざるを得ない諸事情の萌芽は、この純粋小説論にふくまれている多くの矛盾に根をおいているのである。 純文学、私小説は、その語りてである知識人の社・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・会の事情があったわけであるが、とにかく、数年を経て再び作家と教養の課題が立ちあらわれた時には、この教養の実質が過去への屈伏を意味したとともに、その必要を云々する作家の人生的迫力も、到って甲斐甲斐しさを喪失したものであったことは、注目されるべ・・・ 宮本百合子 「作家と教養の諸相」
・・・な濤にうたれ、洗われ、文学の問題としてそもそも芸術一般というような概念に立つ判断が、現実を正しく把握し得るものであるかどうかを十分明らかにしきらないうち、社会生活と文学とは近代文学の本質であった自我を喪失し、商業主義と政論とが混交した読者と・・・ 宮本百合子 「作家に語りかける言葉」
・・・この場合、理性、或は知性は喪失したものとしてしか実際に現れていないのである。 ここに一人の女がいて自分がその男を愛し、恋愛的交渉にあるためにそれを苦しんだ妻が自殺したという時、自分が間接その死の原因となっているという気持を抱くのは人間と・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・批評精神は殆ど完全に喪失している。かかる精神状態は、文化を危険に導くものであると、ジイドは自身の結論の上に身構えて声を大にしているのである。『プラウダ』の社説という文章は、ジイドのこういう観察と結論とを、簡明に且つ猛烈に評している。九月・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
・・・現代文学が、とんでも・ハプンという言葉をつかうような人種の登場によって、真の発展も探求もないテーマを粉飾し、読者をよろこばせることに成功しているならば、それは日本人が日本の言葉――生活を喪失しつつあることを意味するばかりであろう。 専制・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・多くの作品は、共通に、作家の芸術的確信の喪失、自身が作品において主張し得る社会性、存在権に対する懐疑から稀薄にされ、弱められているのである。 川端康成氏は、今日の文壇で、自身としての芸術的境地を守ること、切磋琢磨することのきびしい作家の・・・ 宮本百合子 「十月の文芸時評」
・・・混乱も幻滅も空腹は勿論、一時的な希望の喪失さえあるかもしれない。それをまぎらそうとする気分の追求の一つとしてエロティックなものへひかれる気もちもあるだろう。しかし、そのような気分が心理の一面に或る程度あるにしろそれが私たちの全貌であろうか。・・・ 宮本百合子 「商売は道によってかしこし」
出典:青空文庫