・・・そのジャーナリズムは、民主的要素を加えてきたのは確かですが、本質において資本主義のジャーナリズムであり営業として利潤を求めているものです。現在日本には文芸雑誌だけでさえ三百余種の雑誌が出ているそうです。中にはそうとう大きい同人雑誌も少くあり・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・新聞が、いかに理想低き一営業に過ぎないかを表白している。この精神的影響の上に数万円のハガキ代と、運動費、夥しい労力の消耗との結果、新たに八つの俗地が提灯持ち的に紹介されるに過ぎず、結局日日新聞の広告が全国的に最も有効に行われた事実に帰着する・・・ 宮本百合子 「夏遠き山」
・・・ 商業ジャーナリズムの一隅、工場御用雑誌営業者が歴と存在して、『白百合』『処女』などという印刷物を出し、婦人労働者の奴隷的地位の太鼓もちをやっている。有給生理休暇なんぞのないのは分りきっている。―― だって、それはひどい工場労働婦人・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・ところが昔ながら赤い車輪の辻馬車は、仲間で相互扶助的な組合をこしらえているが、生産手段を自分でもっている個人営業だ。馬、馬車、両方持っているか、馬は自分ので馬車だけ借りるか。――交通労働者として職業組合には属していない。СССР全経済組織は・・・ 宮本百合子 「モスクワの辻馬車」
・・・ 最近モスコーの中で個人資本で営業している店が二パーセントに減った。失業者が統計上のみならず、実際的に絶無となり、有資格労働者が十万人も養成されつつあるが、未だ労働力が足りない。若い労働者の間では、専門技術を勉強して資格ある労働者になら・・・ 宮本百合子 「露西亜の実生活」
・・・ 太郎兵衛はそれまで正直に営業していたのだが、営業上に大きい損失を見た直後に、現金を目の前に並べられたので、ふと良心の鏡が曇って、その金を受け取ってしまった。 すると、秋田の米主のほうでは、難船の知らせを得たのちに、残り荷のあったこ・・・ 森鴎外 「最後の一句」
出典:青空文庫