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・・・ が、彼は、必死の努力で、やっとそれを押しこらえた。そして、前よりも二倍位い大股に、聯隊へとんで帰った。「女のところで酒をのむなんて、全くけしからん奴だ!」 営門で捧げ銃をした歩哨は何か怒声をあびせかけられた。 衛兵司令は、・・・
黒島伝治
「渦巻ける烏の群」
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・・・「あれは、たしかに私が、青森の部隊の営門まで送りとどけた筈ですが。」「そうです。それは私も知っています。しかし、向うの憲兵隊から、彼は、はじめから来ていない、という電話です。いったいならば、憲兵がこちらへ捜査に来る筈なのですが、この大雪・・・
太宰治
「嘘」