・・・もっとも、上述の中でも、噴泉塔の縞や、鈴木君の円板の割れ目などもむしろこの放射型に属するものであったが、このいわゆる放射縞の現象の中で、最も顕著で古くから知られているものの一つは、放電のリヒテンベルグ形像である。これの陰極像などは立派に週期・・・ 寺田寅彦 「自然界の縞模様」
・・・ 無闇に井戸を掘って熱泉を噴出させたために規則正しい大湯の週期的噴泉に著しい異状を来したというので県庁の命令で附近の新しい噴泉井戸を埋めることになった。自分は官命によってその埋井工事を見学に行ったが、それは実に珍しい見ものであった。二、・・・ 寺田寅彦 「箱根熱海バス紀行」
・・・サッポロビールの活動照明、ビール罎の中から光の噴泉が花火のように迸しる。 靴が見えない。玄関の隅々をのぞき廻る。「××さん、靴はあちらですよ」。白い制服を脱いだ看護婦達はやはり女性である。 またある日。 廊下の突当りの流し。タッ・・・ 寺田寅彦 「病院風景」
・・・自分は彼れレニエエが「われはヴェルサイユの最後の噴泉そが噴泉の都の面に慟哭するを聴く。」と歌った懐古の情の悲しさに比較すれば、自分が芝の霊廟に対して傾注する感激の底には、かえって一層の痛切一層の悲惨が潜んでいなければならぬはずだと思うのであ・・・ 永井荷風 「霊廟」
・・・昭和九年の春創刊された『文学界』はこれらの夥しい合言葉の噴泉の如き観を呈し、河上、小林、保田与重郎の諸氏の歴史の方向からはなれた文学の「人間化」「良心」「真理」「真実」論が、蔓延した。 この混乱と没規準とが頂点に達した一九三四年後半、上・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
出典:青空文庫