・・・会長の白井さんの邸宅や紋下の古靱太夫の邸宅にあった文献一切も失われてしまったので、もう文楽は亡びてしまうものと危まれていたが、白井さんや古靱太夫はじめ文楽関係者は罹炎名取である尚子さんは、私に語った。因みに大阪で志賀山流の名取は尚子さん唯一・・・ 織田作之助 「起ち上る大阪」
・・・いいかえれば、私の仲間は猫も杓子も煙草を吸っていたので、私はただ猫でも杓子でもないことを示したかっただけだ。因みに、私が当時ひそかに胸を焦がしていた少女に、彼等煙草生徒も眼をつけていたのだ。 高等学校へはいっても、暫らくは吸わなかったが・・・ 織田作之助 「中毒」
・・・僕は今まで落ちを考えてから筆を取ったが、今は落ちのつけられない小説ばかし書いている。因みに「世相」という作品は、全部架空の話だが、これを読者に実在と想わせるのが成功だろうか、架空と想わせるのが成功だろうか、むつかしい問題だ。 これか・・・ 織田作之助 「文学的饒舌」
・・・としたのです。因みに坂田翁が木村八段と対局した南禅寺の書斎には「聴雨」の二字を書いた額が掛っていたとのことです。 次にこの小説で「私」を出したのはどういう秘密かとのお問いですが、これはあくまで秘密として置きましょう。ただ、僕が「私」を出・・・ 織田作之助 「吉岡芳兼様へ」
出典:青空文庫