・・・いかにして国運を恢復せんか、いかにして敗戦の大損害を償わんか、これこの時にあたりデンマークの愛国者がその脳漿を絞って考えし問題でありました。国は小さく、民は尠く、しかして残りし土地に荒漠多しという状態でありました。国民の精力はかかるときに試・・・ 内村鑑三 「デンマルク国の話」
・・・昔の政事に祭り事が必要であったと同様に文化国の政治には科学が奥底まで滲透し密接にない交ぜになっていなければ到底国運の正当な進展は望まれず、国防の安全は保たれないであろうと思われる。 これは日本と関係のないよその話ではあるが、自分の知ると・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・内閣にしてもその閣僚の一人一人がいかに人間として立派な人がそろっていても、その施政方針がいかに理想的であっても、為政の手首が堅すぎては国運と民心の弦線は決して妙音を発するわけには行かないのではないか。 官海遊泳術というものについてその道・・・ 寺田寅彦 「「手首」の問題」
理化学の進歩が国運の発展に緊要であるという事は永い間一部の識者によって唱えられていたが、時機の熟せなかったため一向に世間には顧みられなかった。欧洲の大戦が爆発して以来は却って世間一般特に実業者の側で痛切にこの必要を感ずるよ・・・ 寺田寅彦 「物理学実験の教授について」
・・・ 歴史のより前進した今日の段階の日本で、その民主化には全く国運が賭されている。失われた数百万の人民の生命がその人柱となっているのである。ゴジ政党が、所謂政治的な政略上、私たちのおくれた感情を足場として、自党の政権欲の満足のため、不具な憲・・・ 宮本百合子 「矛盾とその害毒」
出典:青空文庫