・・・或時は無地物に泥絵具でやたら縞を描いたのを着ていた。晩年には益々昂じて舶来の織出し模様の敷布を買って来て、中央に穴を明けてスッポリ被り、左右の腕に垂れた個処を袖形に裁って縫いつけ、恰で酸漿のお化けのような服装をしていた事があった。この服装が・・・ 内田魯庵 「淡島椿岳」
・・・彼等は、すぐ地物のかげに散らばった。 パルチザンは、その山の中から射撃していたのだ。 パルチザンは、明らかに感情の興奮にかられているようだった。 その森の中からとんで来る弾丸は髪の毛一本ほどにま近く、兵士の身体をかすめて唸った。・・・ 黒島伝治 「パルチザン・ウォルコフ」
・・・鉄道省で出来た英文のモーターロードマップがあって、これは便利であるが、あまりに簡単でその道路と他の地物との関係が不明であり、また最近のところまでアップ・ツ・デートにはなっていないらしい。やはり便利のようで不便なのが現在の世の中である。 ・・・ 寺田寅彦 「異質触媒作用」
大気中の水蒸気が凍結して液体または固体となって地上に降るものを総称して降水と言う。その中でも水蒸気が地上の物体に接触して生ずる露と霜と木花と、氷点下に過冷却された霧の滴が地物に触れて生ずる樹氷または「花ボロ」を除けば、あと・・・ 寺田寅彦 「凍雨と雨氷」
出典:青空文庫