・・・ 数年前物故した細川風谷の親父の統計院幹事の細川広世が死んだ時、九段の坂上で偶然その葬列に邂逅わした。その頃はマダ合乗俥というものがあったが、沼南は夫人と共に一つ俥に同乗して葬列に加わっていた。一体合乗俥というはその頃の川柳や都々逸の無・・・ 内田魯庵 「三十年前の島田沼南」
・・・杉の茂りの後は忍返しをつけた黒板塀で、外なる一方は人通のない金剛寺坂上の往来、一方はその中取払いになって呉れればと、父が絶えず憎んで居る貧民窟である。もともと分れ分れの小屋敷を一つに買占めた事とて、今では同じ構内にはなって居るが、古井戸のあ・・・ 永井荷風 「狐」
・・・│石田重吉┐直次 つや子└ ひろ子└進三〔欄外に〕坂上夫妻 友人の家 ┌──┐九月│五日│八日 └──┘Policeman Military Police下駄の音電燈カバーの細工・・・ 宮本百合子 「「播州平野」創作メモ」
出典:青空文庫