・・・画家にして、同時に熱烈な詩人であったミレーの永久に民衆の良心に培う叫びが聞かれる所以なのです。 私は、思い出すまゝ、偶然ミレーを最初に例として言ったが、同じく、悲痛な、そして、民衆的な、言い換えれば人間的な、共に、人の心を動かさずには止・・・ 小川未明 「民衆芸術の精神」
・・・そのことに自信を培うしかない時が来ているのだと思うがどうだろう。 目下のところ、解決された形で示されている若い娘の幸福は一つもないと云えるだろう。人生は激しいものである上に、今の世紀は全世界が動いていて、そういう時代だからこそ益々若い娘・・・ 宮本百合子 「若い娘の倫理」
・・・ 果実のためには、できるならば、根を培う肥料をえらばなくてはならぬ。 根に対する情熱を鼓吹し、その根の本能的に好むところの土壌のありかを教え、そうして幾千年来堆積している滋養分をその根に供給してやるのが教育の任務である。特に大学教育・・・ 和辻哲郎 「樹の根」
・・・いかに多く知識を取り入れても、それが心の問題とぴったり合っているのでなくては、自己を培うことにはなりません。私はただ血肉に食い入る体験をさしているのです。これはやがて人格の教養になります。そうして、その人が「真にあるはずの所へ」その人を連れ・・・ 和辻哲郎 「すべての芽を培え」
・・・私は自分の上に降りかかってくるように感じられる運命に対しては、それがいかに苦しいことであっても、勇ましく堪え忍び、それによって自己を培う。しかし事が自分の自由の内にあって自分の決意を待つものである限りは、私は自己の意志によってある者を殺し他・・・ 和辻哲郎 「「ゼエレン・キェルケゴオル」序」
出典:青空文庫