・・・ 秋田、山形辺は、食糧危機がひどくなってから、主食買い出しの全国的基地となって来ている。私の乗っている汽車にも、きっとそういう用事で出て来ている各地の旅客がいただろう。その人々は、この一望果てない青田を見て、そこに白く光った白米の粒々を・・・ 宮本百合子 「青田は果なし」
・・・その沈潜するこころもちをまぎらすように、わやわやとした声でかつて軍部に扈従して政治や文学を語った作家が、こんどは、軍事基地施設を拒むことは出来ないという吉田首相をとりまいて文学・政治を談じている。 これらの現実にかかわらず、地球は、今日・・・ 宮本百合子 「五月のことば」
・・・自分のところは無傷で、よその国を軍事基地化し、そこの人民を傭兵として、それで戦争をやるのだ、という風に。―― しかし、みなさま。 この地球のどこに、他国の軍事基地となるために存在して来た国があるでしょう。 そして、みなさま。・・・ 宮本百合子 「国際婦人デーへのメッセージ」
・・・軍事基地とされることは、ことわっている。これだけの言葉は、こんにち、日本と世界のために暗記してでも、くりかえされる意義をもっている。わたしたちは、平和を、欲している。たった三ことのこの日本語こそ、どの国の言葉に訳しても三つの言葉にまとまって・・・ 宮本百合子 「この三つのことば」
・・・ 丹羽文雄は報道班員として行った特攻隊基地の実際の腐敗を、自分の内面生活にかかわりなくつきはなし、それとして描写して、作品としては読ますが、それ以上、文学的人間的感動をもっていない安易な態度があります。もうちょっと気がきいたような作家は・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・日本の軍事基地化に反対なのは、アジアとヨーロッパの平和がなければ、日本の人民の生活安定があり得ないからです。 北京で開かれようとしているアジア婦人大会に、日本代表が出席できるかどうかにかかわらず、世界の平和のためには日本の婦人も彼女たち・・・ 宮本百合子 「宋慶齢への手紙」
・・・ 戦争挑発に反対して平和を守ろうとする闘いと民族の独立、日本が軍事基地化されることに反対する男女の声は、文化・学問の自由を守る要求とともに科学者文学者のひろい層の発言となった。文学者の平和を守るための動きは、労働者階級の平和擁護の運動と・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
出典:青空文庫