・・・を意味する言葉を除けばすべて「キャッキャッ」を基本にして作られている、「キャッキャッ」という言葉は実に人間生活の万能語であって、人間が生れる時の「オギャアッ」という言葉も人間が断末魔に発する「ギャッ」という言葉も、すべてみな「キャッキャッ」・・・ 織田作之助 「可能性の文学」
・・・共同体の基本は父母であり、氏族であり、血と土地と言語と風習と防敵とを共同にするところの、具体的単位がすなわちくになのである。共生ということの意味を生活体験的に考えるならば、必ず父母を基として、国土に及ばねばならぬ。そしてわれわれに文化伝統を・・・ 倉田百三 「学生と先哲」
・・・生活の基本には、そんな素朴な命題があって、思考も、探美も、挨拶も、みんなその上で行われているもので、こんなに毎晩毎晩、同じように、寝そべりながら虚栄の挨拶ばかり投げつけ合っているのは、ずいぶん愚かな、また盲目的に傲慢な、あさましいことではな・・・ 太宰治 「花燭」
・・・その反対に今の新人はその基本作因に自信がなく、ぐらついている、というお言葉は、まさに頂門の一針にて、的確なものと思いました。自信を、持ちたいと思います。 けれども私たちは、自信を持つことが出来ません。どうしたのでしょう。私たちは、決して・・・ 太宰治 「自信の無さ」
・・・それから十日ほど経ったら、また仔細らしい顔つきをして、家へおいでになって、さて、それでは少しずつ、綴方の基本練習をはじめましょうね、とおっしゃったので、私は、まごついてしまいました。後でわかった事ですが、沢田先生は、小学校で生徒の受験勉強の・・・ 太宰治 「千代女」
・・・四福音書に就いては、不勉強な私でも、いくらかは知っているような気がしているのだけれども、ロマ書、コリント前・後書、ガラテヤ書など所謂パウロの四大基本書簡の研究までは、なかなか手がとどかないのである。甚だ、いい加減に読んでいる。こんど、今君の・・・ 太宰治 「パウロの混乱」
・・・「でも、基本的人権というのは、……」 と、誰かが言いかけると、「え?」 とすぐに出しゃばり、「それは、どんなんです? やはり、アメリカのものなんですか? いつ、配給になるんです?」 人絹と間違っているらしいのだ。あま・・・ 太宰治 「眉山」
・・・実在を何処までも主語的なるもの、基本的なるものに求めた。そこから彼はいわゆる独断的形而上学に陥った。カントの排斥を受けねばならなかった所以である。 真に自己自身によってあり、自己自身を限定するものは、それ自身に於てあり、それ自身によって・・・ 西田幾多郎 「デカルト哲学について」
・・・生計不如意の家は扨置き、筍も資力あらん者は、仮令い娘を手放して人の妻にするも、万一の場合に他人を煩さずして自立する丈けの基本財産を与えて生涯の安心を得せしむるは、是亦父母の本意なる可し。古風の教に婦人の三従と称し、幼にして父母に従い、嫁して・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・からのち、益々解放運動とその文学運動の中心課題にてい身してゆくにつれ、論策も主としてプロレタリア文化・文学運動の基本的方向の提示とその科学的な方法論にうつって行ったことは現実と実感の必然であった。 短い月日の間に、はげしく推移する情勢に・・・ 宮本百合子 「巖の花」
出典:青空文庫