・・・なくして手当たり次第に読書することは、その割合いに効果乏しく、また批判の基準というものが立ちがたい。 自ら問いを持ち、その問いが真摯にして切実なものであるならば、その問いに対する解答の態度が同様なものである書物を好むであろう。まず問いを・・・ 倉田百三 「学生と読書」
・・・そういうDさんだって、僕があの人の日常生活を親しくちょいちょい覗いてみたところに依ると、なあに御自分の好き嫌いを基準にしてちゃっかり生活しているんだ。あの人は、嘘つきだ。僕は俗物だって何だってかまわない。事実を、そのままはっきり言うのは、僕・・・ 太宰治 「ろまん燈籠」
・・・ 末広君の独創を尊重する精神は、同君の日本及び日本人を愛する憂国の精神と結び付いて、それが同君の我国の学界に対する批判の基準となっていたように見える。「ケトーの真似ばかりするな」これが同君のモットーであった。この言葉の中には欧米学界の優・・・ 寺田寅彦 「工学博士末広恭二君」
・・・今年の新卒業生が有害な制度の犠牲になるのを防ぐために、と職業安定法、労働基準法などの箇条を説明していられます。どのような職業につく人にもあてはまる――つまりことしから就職なさるみなさまのなかのある人々にもあてはまることとして。―― この・・・ 宮本百合子 「新しい卒業生の皆さんへ」
・・・原始キリスト教では、キリスト復活の第一の姿をマリアが見たとされて、愛の深さの基準で神への近さがいわれたのだが後年、暗黒時代の教会はやはり女を地獄と一緒に罪業の深いものとして、女に求める女らしさに生活の受動性が強調された。 十九世紀のヨー・・・ 宮本百合子 「新しい船出」
・・・モラルの基準もぐらついている。百万円の宝くじに当った人はバクチ打ちとして捕えられない。けれども、バクチは千葉県の競馬場でも大騒動して検挙されているし、新宿もそれでさわいだ。五十円の宝くじを買って、百万円あたる、ということはバクチでないだろう・・・ 宮本百合子 「新しい文学の誕生」
・・・ 階級闘争の実践の過程で階級的基準をぬいた善行というものはあり得ない。まず第一にこれがアレゴリーの性質とブツかる。 第二に、アレゴリーは、静的だ。静思的だ。それだから、たとえそれが反抗的な要素によってつくられていても、直接に、大胆に・・・ 宮本百合子 「新たなプロレタリア文学」
・・・われわれの努力は、より強固にされ、明確にされた政治性――党派性によって客観的に現実を理解し、文学運動においてつかむべき当面の環をはっきり知り、それを基準として全同盟の組織活動を整理し、深め、より精力的に企業・農村の大衆の中へ活動することに払・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・そのために、労働基準法で、母性保護の諸条件が多くなることで、雇主は、一人当り費用の多くなる婦人を使うより生理休暇のいらない、深夜業の出来る男を使った方がいいと、逆に勤労婦人の生活安定をおびやかすことにもなって来るのである。 勤労人民にと・・・ 宮本百合子 「いのちの使われかた」
・・・ 市民的なモラルの基準になるこういうことさえも、私たちは本当に純潔な階級活動家としてまじめに理性的にとりあげていかねばならない。 共産党は外の政党と全くちがう本質に立っている。政権をとることが自分の党の利己的な利益と一致した外のあら・・・ 宮本百合子 「共産党とモラル」
出典:青空文庫