・・・だが、それらの用語は天から降る金の箭のように扱われ、古代・中世・近世日本の文学におけるそれらの基準の概括の背景と内容は説き明されない。かかる日本文学古典上の評価の規準の推移に関するまとまったものとしては寡聞にして僅に久松潜一氏の『日本文学評・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・しかしながら、この文学作品評価の基準の問題は、夥しい論議と自身の未成熟のうちに端初的な数歩を踏みだしたばかりで、以来、文学原理の課題として正当な発展はさせられないでいた。この文学評論の著者は、第二篇の「内容と形式の問題」「文学史と批評の方法・・・ 宮本百合子 「作家に語りかける言葉」
・・・ 時代の明暗は、この同じ昭和二年に蔵原惟人の「批評の客観的基準」という論文を送り出している。これより先、印象批評に対して、「外在批評」ということが云われており、そのことでも、主張されるところは、文学の評価に何らかの客観的なよりどころを求・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・労働基準法では少年の労働について保護的な規定をもうけているし、労働組合が青少年婦人の待遇改善を要求している。生活必需品の値上げについて賃上げ要求をして七百円から千五百円になり、千八百円ベースの今日、物価はぐっと高くなり公定価も上って、とても・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・ あの作品は、今日に到る日常生活の雰囲気の急転の初めの時期、客観的にも正しいと納得することの出来る生活の基準を模索していた一般の心理が、作者の或る意味での敏感な社会性に反映して生れた作品であった。作品の題名にも現れている作者の体勢が、人・・・ 宮本百合子 「生産文学の問題」
・・・大森義太郎の場合を例にとって、何故彼の映画時評までを禁じたかという、今日における検閲の基準を説明した。それによると、例えば大森氏はその時評の中に、日本の映画理論はまだ出来ていない、しかしと云ってプドフキンの映画理論にふれている。大森氏がプド・・・ 宮本百合子 「一九三七年十二月二十七日の警保局図書課のジャーナリストとの懇談会の結果」
・・・けれども、このはっきりした基準のない行動への衝動欲求は、非常に多くの危険と文学の崩壊の要素をふくんでいると思われる。 行動が、歴史の積極面と結合して階級移行の方向になされ、質的変化を可能とする見とおしに立つのでなければ、この現実の客観的・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・それが基準だ。 一つの室でも、だから住む人間によって値段がちがって来る。月給六十ルーブリとる工場労働者が十ルーブリで借りていた室を、仮りに今度は百五十ルーブリとる労働者がかりることになったとする。室代は月給が九十ルーブリ増した率で何割か・・・ 宮本百合子 「ソヴェト労働者の解放された生活」
・・・この一種の混乱が、第三回大会で、運動としての統一的活動の必要について自己批判を生み、一方、小説部会の報告にあらわれたような、民主主義文学運動と作品についての評価の基準の喪失をもたらした。この民主主義文学運動として客観的な評価の基準が失われて・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
・・・きなり象形文字と考えるのは非常な間違いで、音を写した文字の方が多いこと、同じ音で偏だけ異なっているのは偏によって意味の違いを表示したもので、発音的には同一語にほかならないこと、従って一つの音を表示する基準的な文字があれば、象形的に全然つなが・・・ 和辻哲郎 「露伴先生の思い出」
出典:青空文庫