・・・日本の親のいじらしい心は、他の半面で、日本の軍国主義社会を支え維持させて行く大きな経済的社会的基盤となった。というのは「うちの息子は学問ができて人物もしっかりしているのに、金がないばかりに大学へやれない。知事や大臣にはなれなくても、せめて軍・・・ 宮本百合子 「新しいアカデミアを」
・・・ 人民的な文化建設をいうとき、これまではいつも、文化現象の社会的基盤の分析がまず行われてきました。田辺哲学の批判もそこまではきている。太宰治の文学についてそこまではいわれている。「しかし」というところが一般の感情のうちに残っていて、太宰・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・そのころのプロレタリア文学運動のおかれていた未熟でやや機械的だった文学の階級的基盤の解釈なりに、プロレタリア文学もやっぱり「伸子」を文学のらち内での現象としてしか見ていなかったことがわかる。 最近二三年このかた、「伸子」ははじめて読者の・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第六巻)」
・・・ 一九一八年第一次世界大戦終了の後、日本にも国際的な社会変化の波濤がうちよせ、人間性の展開および文学の発展の基盤としての社会性の問題がとりあげられた。けれども、徳川末期から明治へと移った日本文学の特色の一つとしての非社会性がつよい余韻を・・・ 宮本百合子 「歌声よ、おこれ」
・・・そういう妙なことは何の基盤で出来るのだろうか。吉田は腹の出来た政治家と云われている。事務的に科学的にものごとを処理する人柄よりも、ワッハッハという笑いかたで解決する東洋古風型であると云われる。 トルーマン大統領がこんどの選挙に勝利したに・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・しかし、支配権力の歴史的な性格が、国の文化と知性との基盤にあって、どう作用するかということには理解を及ぼさせなかった。そこに、あの時代のブルジョア・インテリゲンツィアの限界もあったのである。 併行して、日本の若き人道主義たち、「白樺」の・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・なぜならば、政治が文学に優位するという社会文化現象の基盤についての理解は、政治活動にしたがっているある種のものが、文化・文学運動に何かの命令する権能をもっていることを意味するかのような場合を生じたから。そして、他の一面では、現代の社会感情と・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・日本のわたしたちは、今こそ、よかれあしかれ日本の社会機構の現実の基盤とぴったり結合した文化・文学の理論をもって、発展的に動きだせる時に来ている。社会科学、政治的活動、労働運動の全線が、今日は日本のいつの時代にあったよりも正常な関係をもって市・・・ 宮本百合子 「作家の経験」
・・・ かつては、世界で一番一人当りの貯金高の多かったイギリスの中流人の生活という安穏な日々の基盤の上に、ゴルフが流行し、同じ消閑慰安の目的にそうものとして探偵小説が発達したことには、必然があった。吉田首相がイギリスの探偵小説をよみ、日本の大・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・文学の発展にはそれにふさわしい社会的な基盤が必要であり、勤労階級の生活の安定の要求は全くぴったりと私たちの人間らしい文化の要求と一体のものであるという事実である。改正された憲法は男女を平等としている。しかし現実の生活で男女の労働賃金は同一で・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
出典:青空文庫