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・・・銅板に砂を塗れる如き顔の中に眼懸りて稲妻を射る。我を見て南方の犬尾を捲いて死ねと、かの鉄棒を脳天より下す。眼を遮らぬ空の二つに裂くる響して、鉄の瘤はわが右の肩先を滑べる。繋ぎ合せて肩を蔽える鋼鉄の延板の、尤も外に向えるが二つに折れて肉に入る・・・
夏目漱石
「幻影の盾」
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・・・「ドッテテドッテテ、ドッテテド、 タールを塗れるなが靴の 歩はばは三百六十尺。」 恭一はすっかりこわくなって、歯ががちがち鳴りました。じいさんはしばらく月や雲の工合をながめていましたが、あまり恭一が青くなってがたがた・・・
宮沢賢治
「月夜のでんしんばしら」