・・・まだ切符は売り出していないのであった。 その時間からは、「女人哀愁」というのとニュースとが見られるわけである。私は特別にその映画を目ざして行ったのではなかったが、観てもいいという心持で、列の最後の方にまわって傘をさしたまま往来に立ってい・・・ 宮本百合子 「映画」
・・・のような代物にまとめて売り出した。「犬横丁」は全部が嘘を書いているとは云えないとしても、現れて来る何人かのコムソモールの生存重点を、彼等の性生活、而も病的に拡大された性関係の混乱にだけ置いていることに、作家は計らず自身の階級的立場を曝露・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・どこもかしこも歳暮売出しの飾りで賑やかです。色彩は、はでであるが、何か通行人の影は黒い、今夜はクリスマス・イーヴなのだけれども、学生の街である神田でさえ、そのような楽しげな雰囲気はなく、うちへかえって夕刊を見て、ああ本当にと思ったほどです。・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ 町へ雑誌と、書く紙を買いに行こうと思いながら、寒さにめげて一日一日とのばして居たが、歳暮売出しを町の店々は始め、少しは目先が変って居るからと云う事で、芝居ずきの「御ともさん」とお繁婆と女中とで午前の日が上りきって、暖い時に出かけた。・・・ 宮本百合子 「農村」
・・・ロザリーは、ハリ・オックレーブと云う、家柄のよい売り出しの弁護士と結婚しました。始めから終りまで、彼女の要求通りの条件で。 結婚後も、母となっても、自分の仕事は持続すること。 収入に準じた率で生活費も負担して行くこと。 ロザリー・・・ 宮本百合子 「「母の膝の上に」(紹介並短評)」
・・・ ――モスクワのどの店頭にだって、Xマス売出しはない。 厳冬で、真白い雪だ。家々の煙出しは白樺薪の濃い煙を吐き出している。赤と白とに塗った古い大教会のあるアルバート広場へ行ったら、雪を焚火のおきでよごして、門松売りのようにクリスマス・・・ 宮本百合子 「モスクワの姿」
・・・と作者が自分の父母の生涯を描いた二冊の作品とを代表選集として売り出している。 既刊の五冊を読んだ感想として、パール・バックが中国の生活を描いたこれらの作品は、とくに今日の日本の読者にはぜひ熟読されるべき性質のものであるという感が深い。パ・・・ 宮本百合子 「若い婦人のための書棚」
出典:青空文庫