・・・従って前述の考えにも幾多の変更や洗煉を加える必要の起る事も勿論である。ただこういう立場からもう少し深く考えてみる事も全く無用の業ではあるまいと思っている。更に進んで文学以外の芸術にも同様な考えを拡げて行くのも面白いだろうと思っている。・・・ 寺田寅彦 「文学の中の科学的要素」
・・・ 以上のごとく考えて来るとこの一見任意的であるかのごとき定座の定数やその位置がなかなか任意ではなくて容易には変更を許さないような必然性をもっているように思われて来るのである。それでこの規定はもちろん絶対ユニークなものではないまでも種々な・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・ 現代の一般の人について考えてみるとこの三上には多少の変更を要する。まず「枕上」であるが、毎日の仕事に追われた上に、夜なべ仕事でくたびれて、やっと床につく多くの人には枕上は眠る事が第一義である。それで眠られないという場合は病気なのだから・・・ 寺田寅彦 「路傍の草」
・・・殊に政府の新陳変更するに当りて、前政府の士人等が自立の資を失い、糊口の為めに新政府に職を奉ずるがごときは、世界古今普通の談にして毫も怪しむに足らず、またその人を非難すべきにあらずといえども、榎本氏の一身はこれ普通の例を以て掩うべからざるの事・・・ 福沢諭吉 「瘠我慢の説」
・・・故曰、形は偶然のものにして変更常ならず、意は自然のものにして万古易らず。易らざる者は以て当にすべし、常ならざる者豈当にならんや。 偶然の中に於て自然を穿鑿し種々の中に於て一致を穿鑿するは、性質の需要とて人間にはなくて叶わぬものなり。穿鑿・・・ 二葉亭四迷 「小説総論」
・・・朝日新聞社より多少の涙金渡るべし一 此金を受取りたる時は年齢に拘らず平均に六人の家族に頭割りにすべし例せば社より六百円渡りたる時は頭割にして一人の所得百円となる計算也一 此分配法ニ異議ありとも変更を許さず右之通明治四十二・・・ 二葉亭四迷 「遺言状・遺族善後策」
・・・ 第二次世界大戦ののち、アジアとアフリカの民族は、こののろわしい関係を変更するために立ちました。中国の人々が、日本その他の国の帝国主義を排除して中華人民共和国となったばかりではありません。耐えがたい隷属の生活であればこそ、世界平和と民族・・・ 宮本百合子 「新しいアジアのために」
・・・しかも音楽の初めの部分だけを近衛氏自作に変更するのだそうだ。兄もよろこぶだろうと、この芸術的プランをよろこんでいるのは、素朴である。こういうことを考えついたり、貴族院議員をやめたり、兄が兄がと亢奮して気の毒である。〔一九三七年七月〕・・・ 宮本百合子 「雨の小やみ」
・・・ーメンな若者として扱われており、その点では作者が一見常識を蹴とばしているようだのに、さてそれならそのように苦しむ自分を虚偽と知らぬ虚偽でとりかこみ、それを命にかけて守っている者どもとの関係を我から一擲変更して、ええ面倒な、と隠居してしまうと・・・ 宮本百合子 「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」
・・・けれども、エンゲルスの意見でこの問答体の書きかたが変更され「共産党宣言」として「共産主義者の政策をのべる」ことが決定された。第二回のロンドン大会に出席したマルクスは、共産主義者同盟の名によって「共産党宣言」を起草することを頼まれた。一八四八・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
出典:青空文庫