・・・そうした外敵からは彼らは安全であったと言えるのである。しかし毎日たいてい二匹宛ほどの彼らがなくなっていった。それはほかでもない。牛乳の壜である。私は自分の飲みっ放しを日なたのなかへ置いておく。すると毎日決まったようにそのなかへはいって出られ・・・ 梶井基次郎 「冬の蠅」
・・・卵のところを離れず、いつもヒレを動かしながら、水をきれいに交流させる。外敵が来ると、これとたたかう。試みに、私は指を水中の卵のところへさし入れてみた。すると、父親ドンコが頭を指にぶっつけて来て押しのけようとする。それでも、なお指を近づけよう・・・ 火野葦平 「ゲテ魚好き」
・・・これを筆にするも不祥ながら、億万一にも我日本国民が外敵に逢うて、時勢を見計らい手際好く自から解散するがごときあらば、これを何とか言わん。然り而して幕府解散の始末は内国の事に相違なしといえども、自から一例を作りたるものというべし。 然りと・・・ 福沢諭吉 「瘠我慢の説」
・・・ために、開口一番「日本には地震が何より国家の外敵だ」と云い、それが「他のどの国にもない自然を何より重要視する秩序を心理の間に成長させた」それ故「ヨーロッパの左翼の知性」は日本に入って「日本独特であるところの秩序という自然に対する闘争の形とな・・・ 宮本百合子 「「迷いの末は」」
出典:青空文庫