隣家のS女は、彼女の生れた昨年の旱魃にも深い貯水池のおかげで例年のように収穫があった村へ、お米の買出しに出かけた。行きしなに、誰れでも外米は食いたくないんだから今度買ってきたら分けあって食べましょうと云って乗合バスに乗った・・・ 黒島伝治 「外米と農民」
・・・ 失業の不安で波だつ空気の中に響いている声は、都民税二・七倍増し。外米の輸入。滞貨放出。ガスの制限もゆるやかになりました。そして冬は石炭も手に入るであろう。 ここに、わたしたちを堪えがたくする現実の矛盾がある。理性のある社会の生活で・・・ 宮本百合子 「権力の悲劇」
・・・どうせ誰だって外米をたべているんだからとすてて考えず、外米をたべることを躊躇しないとともに、その外米は現在の力で求めうる一番正当な価格のものか、外米に不足なヴィタミンBを何で補って健康を保ってゆくかという点をも積極的に考えてゆくべきである。・・・ 宮本百合子 「その先の問題」
出典:青空文庫