・・・および反帝国主義戦争の投書に外聞を忘れた露骨さで集注されている例でも、ファッショ化した支配階級が何を恐怖しているか明らかではありませんか。 八十日の間、私と同志たちとの連絡は全く断たれ、留置場の外の様子はちっともしれない。作家同盟の後藤・・・ 宮本百合子 「ますます確りやりましょう」
・・・――仕様がありゃしない、半年も札下げとくの、第一外聞が悪いやね」「だって書生さんなんかより異人さんの方がよかないの、金廻りがいいそうだもの」 せきは、「どうして!」と、顔じゅう顰めて首を振った。「とてもだよ。出たり入った・・・ 宮本百合子 「街」
・・・したがって彼は、義理にしたがって動くのではなく、外聞を本にして動く。たとえば、けちだと言われまいと思って知行を多く与える類である。強い大将ならば、必要あって物を蓄える時には、貪欲と言われようと、意地ぎたないと言われようと、頓着しない。知行は・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
・・・劇場を出た時には三人とも歓びのあまり、酔いつぶれた人のように、気の狂った人のように、恥も外聞もなく、よろめいて歩いた。バアルはその夜徹夜して書きたいような心持ちになったが、筆をとってみると一語さえも書くことはできない。デュウゼについて初めて・・・ 和辻哲郎 「エレオノラ・デュウゼ」
出典:青空文庫