・・・科学の区別は別問題として、その人々の科学というものに対する見解やまたこれを修得する目的においても十人十色と云ってよいくらいに多種多様である。実際そのためにおのおの自己の立場から見た科学以外に科学はないと考えるために種々の誤解が生じる場合もあ・・・ 寺田寅彦 「科学上の骨董趣味と温故知新」
・・・しかも物理学の場合などとは到底比較にならない多種多様の変化を示しうることはもちろんである。 物理学で用いられる数学の中でも最も重要なものはいわゆる微分方程式である。これは物理学的ないろいろな量の相互の関係を決定する数式であるが、それがそ・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・この事実は一方では地震や火山の多いこととも関係するが、一方ではまた日本の風景の多種多様なことや、ひいてはまた国々の郷土的色彩の変化の多いこととも連関していると思われる。われわれの祖先から住み古したこの国土の地質自身からがすでにあらゆる世界じ・・・ 寺田寅彦 「カメラをさげて」
・・・ 岩石に関してはまだ皺襞や裂罅の週期性が重要な問題になるが、これはまた岩石に限らず広く一般に固体の変形に関する多種多様な問題と連関して来るのである。 弾性体の皺襞については従来「弾性的不安定」の問題として理論的にもかなりたびたび取り・・・ 寺田寅彦 「自然界の縞模様」
・・・連作にもいろいろありましょうが、例えば雪なら雪をいろいろの角度からいろいろの距離で眺めたものも面白くないことはありませんが、しかし私どもにはそういうのよりも、むしろ、表面上何の関係もないような多種の影像が連立していて、叙景や抒情が入り乱れ、・・・ 寺田寅彦 「書簡(2[#「2」はローマ数字2、1-13-22])」
・・・もちろん、数学の公理や論理はきわめて簡単明瞭であり、使用される概念も明確に制定されているに反して、言語による思考の場合では、これらのすべてのものが複雑に多義的であるから、一見同様な前提から多種多様な結論が生まれ出るように見える。しかし実際の・・・ 寺田寅彦 「数学と語学」
・・・それと同時に多種多様な民族の色々な文化の流れがこの極東の細長い島環国の中に合流し集注したであろう。従って我等の国語にはあらゆる民族の言語が混淆し融合してしまって、今となっては容易に分析することが出来ないようになってしまっているように思われる・・・ 寺田寅彦 「短歌の詩形」
・・・要するに日本の自然界は気候学的・地形学的・生物学的その他あらゆる方面から見ても時間的ならびに空間的にきわめて多様多彩な分化のあらゆる段階を具備し、そうした多彩の要素のスペクトラが、およそ考え得らるべき多種多様な結合をなしてわが邦土を色どって・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・の要素の集団で個々の個性は「充分複雑に」多種多様であって、いわゆる「偶然」の条件が成立するからである。 これについて思い出すのは、東京の著名な神社の祭礼に、街上で神輿をかついで回っている光景である。おおぜいの押し合う力の合力の自然変異の・・・ 寺田寅彦 「物質群として見た動物群」
・・・ところがそういう集団の組織は時と場合により多種多様であるから、もしそこになんらか外側から人工的に加えられた制限がないとしたら、その結果はどこへどうそれて行くか見きわめがつかないものになってしまうであろう。そういうものもまた一つの自由な詩形と・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
出典:青空文庫