・・・いわゆる名門の子弟を教育する学習院は、そのころから伝統的な貴族や学者の子弟ばかりでなく金力であがなった爵位で貴族生活の模倣をたのしむものの子供や多額納税という条件で入学の可能な家庭の子供もふくんでいたのであったから、漱石の権力・金力と人間性・・・ 宮本百合子 「日本の青春」
・・・ブルジョア国で、これだけ素敵な設備のある産院だったら、そんな帖簿はきっと金持の夫人達の名と多額な入院料を記入した産院利潤帖だろうが、モスクワではそうではない。 一々、産婦の住所、年齢、職業、一般健康状態、姙娠中の状態、出産当時の条件、及・・・ 宮本百合子 「モスクワ日記から」
・・・一人当り一〇〇円ずつ引出せば、家内何人でもやって行けるというのは、多額の預金をもつ人々だけの安心である。今日の社会は、もう去年の秋と異って来ている。モラトリアムをしかなければならないということは、とりも直さず、日本全国の正直な人民生計は赤字・・・ 宮本百合子 「モラトリアム質疑」
・・・それは数十万円の税金を払う最も多額の利潤を得た人々のために、政府が考えてやっている便法である。より少い、より僅かしか儲けなかった人に課せられる税は、率は少くても利潤の大半を引攫うものであろうが、それに対しては猶予はないのである。彼等の戦時利・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫