・・・ 田舎の、普通の、恋愛形式になっているのね、きっと。夜這いとかいう事なんじゃないの? とんでもない、そんな、私は、決して、そんな、失礼な。いいえ、そうでなかったら、かえって失礼みたいなものだわ。屋根へあがって、二階のこの部屋へ、しか・・・ 太宰治 「冬の花火」
・・・十返舎一九の『膝栗毛』も篇を重ねて行くに従い、滑稽の趣向も人まちがいや、夜這いが多くなり、遂に土瓶の中に垂れ流した小便を出がらしの茶とまちがえて飲むような事になる。戦後の演芸が下がかってくるのも是非がない。 浅草の劇場では以上述べたよう・・・ 永井荷風 「裸体談義」
・・・ そして、或朝しらしらあけに、隣の男のところへ夜這いし、かえるところを巡査に見とがめられ詰問され、姙娠五ヵ月のことから、その子はだれの子かわからないことから、鎌倉で巡査と関係して居たことまですっかり話す。 巡査は、敏腕と云われる、二・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
出典:青空文庫