・・・東洋の禅や、一般に大乗的な宗教の行為の決定に形式の善をとって、実質の善をとらないのもそのためなのである。行為の決定の徹底的な正しさを追究するときには、カントのように純に意志そのものの形式によらざるを得なくなるのは当然であって、この意味で私は・・・ 倉田百三 「学生と教養」
・・・だんだんそれが分って、しかもしんからそれのわかるのは様々の意味で私一人であり、けれども父のおもりをして国府津にくらすことは不可能ですし、大乗的に行動して家も別にしたのでしたが、太郎はよい折に生れました。この太郎という名、ヌーとしていて男の児・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・その意味では、最も大乗的な素直さが求められる。私たちが今日を生き、そしてその中に、人間としての自己の生涯を与えつくすところの現実社会のありように対して、そこから生まれ生もうとする文学に対して、私たちはどこまでも、若々しくおどろきと疑いとをも・・・ 宮本百合子 「今日の文学と文学賞」
・・・先生は、人生の練達者であられたから、恐らく様々な複雑困難な、日本の社会では特に女にとって面倒な将来の永い路を見とおされて、大乗的激励を与えて下さったのであったろうと思う。 それから、案の定私のところには生活のいろいろな大小の濤がおこり、・・・ 宮本百合子 「坪内先生について」
出典:青空文庫